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溜池随想録 #24 「ダウンサイジングとオープンシステム化」 (2011年5月)

ダウンサイジング

 企業におけるコンピュータ利用が、会計や給与計算のような計算を中心とする分野から、競争戦略に直結する情報処理分野へと拡大する一方で、コンピュータのダウンサイジングが進展した。

 情報処理におけるダウンサイジングとは、平易に言えば、大型汎用機をワークステーションやサーバーなどの小型で、コストパフォーマンスのよい機器に置き換え、コスト削減を図ることである。

 ダウンサイジングの動きは、マイクロエレクトロニクスの発展によって実現した小型かつ高性能なコンピュータが登場し始めた1980年代後半から始まり2000年頃まで続いたと言われている。しかし、各種の統計を見ると、2000年時点ではまだ相当数のメインフレームが稼働しており、実際のダウンサイジングは21世紀になってからも続いていたと考えるべきである。

 日本の大型汎用機市場に限定すれば、かつて年間数千台の需要があったメインフレーム市場は2000年頃には数百台に減少し、近年は百数十台の規模にまで縮小している。その代わりに急増したのが、サーバーやワークステーションである。コンピュータの急激な価格低下が、利用企業や利用分野の拡大に拍車をかけたと考えられる。

(参考)一般社団法人電子情報技術産業協会の自主統計によれば、平成21年度のメインフレームの出荷台数は562台であるが、価格が2億5千万円以上のものに限れば164台である。一方、同統計によれば、平成21年度のワークステーションを含むサーバーの出荷台数は約43万台となっている。

オープンシステム化

 ダウンサイジングは、同時に大型汎用機特有のプロプライエタリ なOSからUNIX系やWindows系のOSへの移行を意味し、これをオープンシステム化ということがある。Windows系のOSはマイクロソフトのプロプライエタリなOSであり、UNIXもベンダーによって仕様が異なるので、厳密に言えば「オープン」とは呼べないという専門家もいる。しかし、これらのOSは、大型汎用機のOSとは異なり、特定のハードウェアの上でしか動作しないということはない。つまりダウンサイジングに伴ってハードウェアやソフトウェアの選択肢が広がるという意味で、「オープンシステム化」と呼ばれている。

 オープンシステムはユーザーが様々なハードウェアやソフトウェアの中から最適と思われるものを選択し、組み合わせることができ、特定のベンダーに拘束される度合いは、大型汎用機に比べれば、はるかに低くなる。このため、市場への参入障壁も低くなり、市場では多くのハードウェア製品、ソフトウェア製品が競い合うことになる。実際、大型汎用機の時代の終盤には、そのメーカーは、指を折って数えられたが、サーバーやPC、データベース等を開発・提供している企業の数は、これと比較にならないほど多い。必然的に市場競争は激しくなり、価格は低下していくため、オープンシステムは大型汎用機のシステムに比べて、圧倒的にコストパフォーマンスが優れている。
 しかし、オープンシステムは、異なるルーツを持つ様々なマシンやソフトを組み合わせてシステムを構成するため、障害の原因の特定が困難であり、運用管理コストが高くなる可能性がある。したがって、ユーザーにとって、単純に大型汎用機で構築されたシステムよりオープンシステムのほうが好ましいとは限らない。

 オープンシステム化がブームになった背景には、特定のベンダーに拘束されると情報システムのTCO(総保有コスト) が高くなる可能性が大きいという経営者やCIOの判断があったと考えられる。

 したがって、仮にシステムの安定的な運用が優先され、システム障害時の対応も含めてTCOが低くなるような用途であれば、プロプライエタリなシステムのほうがよいという判断もあり得る。日本では大手金融機関を中心に大型汎用機を使い続けている企業が数多く存在しているが、おそらくこうした経営判断があるのだと考えられる。

 


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