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いまだに蔓延する「霞が関曼荼羅」(霞が関パワポ、官僚パワポ)PDFの問題点

ここの所、不動産ID関連の事を書くにあたって、国土交通省のサイトの公式の発表資料を色々調べて確認していたんですが、相変わらず酷いですね〜。

まず、情報がまったく整理されておらず、色々な所に散逸していて、どれが最新のものかも分りづらい、という。

何よりも問題なのが、検索して一番に出てくる、内容がゴチャゴチャに記載されたPDFファイル

ホント、もうね、これだけで、日本の官僚と行政のレベルが分かるってもんです。

こういうアクセシビリティ最悪のものを恥ずかしげもなく公開してくる辺りで、「あ〜ウェブの事もなんにも分かっていないトンチンカンな人達がやっているんだなぁ」とか「情報発信とかコミュニケーションとかまったくな〜んにも念頭に無い人達なんだなぁ」とね。

これ、巷では通称「霞が関曼荼羅」(霞が関パワポ、官僚パワポ)なんて言われて嘲笑の対象。「ポンチ絵」だの「曼荼羅」なんて揶揄されてネタになっているわけです。

さらには英語圏の日本界隈クラスタにもバレている。

日本の企業・官庁はもう少し「まずい」と思ったほうがよい

私が以前から指摘してきた上記のことが、ついに海外勢にまで知れ渡ってしまったようで、困りましたね。というか、日本の企業や官庁の皆さんはもう少し困ったほうがよいでしょう。

世界では「日本のパワポは世界一醜い」という話で盛り上がっている(泣) 
株式会社コミコン

まぁ、それを当然のように看過し続けてしまった我々日本国民の責任といえばそれまでですが。

この「霞が関パワポ」「官僚パワポ」、もとは官僚が大臣などに説明する際の資料からきているとかなんとか言われていますが、そんなこたぁどーでも良いのです。国民への情報提供・情報発信を行うにあたり、こんなんで良いのかどうか、というのが問題なのであります。

具体的に何が問題なのか、簡単に列挙してみましょうか。

1)非ウェブ的で必要な情報にたどり着けない

ウェブ(World Wide Web)というのは、ハイパーテキストのデジタル文書をリンクで繋げて参照できるようにしたもので、始まりは学術系の論文などを公開したりして使われるようになったという背景があります。なので文書構造がはっきりしていて参照や出典などを明らかにできるようになっているという特徴があります。

つまり、ウェブの利点はリンクで必要な情報をたどることができる、ということなのですが、「霞が関パワポ」「官僚パワポ」をボンと出されても、そこがドンズマリなわけです。それ以上リンクをたどれません

なので、いきなり「霞が関パワポ」「官僚パワポ」のPDFを開かされても、「えっと、元のメインページはどこ?」「この資料の説明はどこにあるの?」「親階層のインデックスページは無いの?」と、いつもイライラします。

この資料がどんなコンテキストで出てきたものなのか全く分かりようがないのですから、資料的な価値もゼロであります。

一言で言うと、ウェブ的ではなく、不便きわまりない。利用者のことを考えていません。

2)内容が誰にも正しく理解されない

「霞が関パワポ」「官僚パワポ」で情報が正確に伝わるだろうと思っていたらトンデモない話しであります。

あのような資料というのは、単に「イメージ」を伝えるだけのものであります。個々の項目について誤解の無いように伝えるには、まともな文章が必要です。プレゼン用なら文章の代わりにスピーチ。

でないと、人それぞれ勝手にイメージを独自に解釈してしまいます。

まともな資料というのは、まずちゃんとした文章があって、その文章を補完するために図表やイメージ図が出てくるのです。

イメージ図だけ出して誤解なく伝わると思っていたら大間違いです。(なんでこんな小学生相手みたいな事を官僚向けにわざわざ説明しなければならんのか)

それっぽい言葉を散りばめて、曖昧で抽象的な言葉を使いまくって用語の定義もせずに、なんとなくそれっぽい内容の「霞が関パワポ」「官僚パワポ」を作ったって、誰にも何にも伝わらないどころか、誤解ばかりが広がるってもんです。

一枚のシートにたくさんの文字やグラフィックを詰め込んだパワーポイントをよく見かけます。なるべく枚数を少なくしたいのだろうと思われますが、残念ながら「何がいいたいのかさっぱりわからない」資料になっていることがほとんどです。これは文字情報よりは間(ま=何もない空間)のほうが意味を提供している、ということを理解していないからです。間(ま)それ自体がメッセージなのです。

さらに、文章それ自体は「単にアタマの中で論理的になぞればよい」のですが、グラフィックは視覚で「解釈」する必要があります(この解釈力は個人の過去の記憶や体験への依存度が強いような気がします)。「感覚的に理解する能力を前提としている」パワーポイントは判りやすいのですが、「アタマの中で文章をなぞる」ことが前提になっている資料は当然ながら「図解」でもなんでもありません。

官僚や役所が作る資料が判りにくいのはそういう理由です。「(なぞっていただくことを前提とした)論理的な文章構造」を、ワープロにではなくパワーポイントという「図解前提のプラットフォーム」にはめ込んでしまったことで、ユーザーが混乱しているのです。

官僚が作るパワーポイントがわかりにくいのはなぜか
https://wirelesswire.jp/2015/12/48629/


3)マルチデバイス非対応

スマホやタブレットなどが登場して大分経ちますが、ウェブの世界もそれに呼応して、「マルチデバイス対応」を意識したものに大きく変化しました。

昔のようにディスプレイのサイズを指定するような固定幅のサイトではなく、現代のウェブ制作者はどんなデバイスのサイズの画面でも問題ないような「レスポンシブWebデザイン」を採用したり、大画面でもスマホやタブレットなどの小さな画面サイズでも問題なく読めるよう意識して作るのが常識となっています。

そういうなかで、レスポンシブでもない内容がゴチャゴチャに記載された「霞が関パワポ」「官僚パワポ」のPDFファイル、なんて論外なわけですよ。せめてHTMLのページありきで、そのPDF版というおまけの位置づけにすべきです。

4)検索エンジンの事を考えていない

Googleなどの検索エンジンというものは、ウェブページの記述言語であるHTMLの構造を解析して文章の内容と重要度を判断してキーワードを決定します。

具体的に言うと、Hタグ(見出し)とPタグ(パラグラフ)でくくられている文章では検索エンジンにとっては全然意味が違ってくるのです。

なので、HタグもPタグもEMタグも何もない、HTMLページではない「霞が関パワポ」「官僚パワポ」のPDFファイルでは、検索エンジンは内容を正しく高い精度で解析する事も出来ず、検索に出てこないか、出てきてもトンチンカンな検索結果に出てきたりするのです。

5)そもそもPDFは印刷用

PDFとは、異なるシステムや環境においても崩れたりすることなく文書を印刷をする為の仕様を元に作られた(PDFの元の先祖はPostScript)ファイル形式であって、元々は印刷向けのファイル形式なわけです。

なので、同内容のHTML形式のウェブページも存在しない中で、「霞が関パワポ」「官僚パワポ」のPDFファイルだけボンと出されるなんて国の情報発信としては論外なのであります。

ホント論外。

6)そもそもプレゼン資料としても失格

良いプレゼンの資料という観点では、他に多くの方たちが「霞が関パワポ」「官僚パワポ」について書いているので、非専門の私としてはそちらに任せます。

7)アクセシビリティへの配慮が皆無

ここで言うアクセシビリティとは、「誰にとっても利用しやすい(読みやすい)」ように配慮する、ということです。主には聴覚障害者とか向けの話しではあります。

PDFだと、文字の大きさから色のコントラストやフォントの種類から何から、読みにくい場合に変更するという選択肢がありません。前述したように印刷向けだから。

アクセシビリティ的にも最悪なのです。

以上です。


(おーい、デジタル庁、仕事してるか〜?)

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