世にも奇妙な場所~閉鎖病棟での270日間~4日目

またまたスキを頂戴し、ありがとうございます。今は仕事も在宅でなかなかほかの方と接する機会がない日々ですが、改めて一人じゃないって幸せを実感できました。ご覧になっている皆様も、今日が幸せな一日でありますよう、心の底からエネルギーを送らせていただきます…><

表題の件、本日も始めさせて頂きます。

4日目(7月18日)

昨夜は眠剤飲んでも寝た感じがしなく朝はすごくダルい。自分の疲れPOINTは、におい、音が気になるところ。昨夜は頭のかゆさ、においがすごく気になった。今井さんという看護師は要注意。自分の中で勝手に仮説を立てて押し付ける。親切なのだろうがTPOをわきまえない人だ。婦長さん(っぽい人名前は忘れた)に抗議したら今井さんは謝りに来た。婦長はいい人、あったかい人だ、薬飲むときに握ってくれた手が暖かかった。担当の看護師の人もきにかけて話しかけてくれた。ひまでひまでしょうがないよーーー

【補足】

この日は、今井さんという看護師の方から「とおふさんはもう少し親離れしたほうがいいと思うよ」って軽くかけられた言葉に敏感に反応して、ワーワー大泣きに大泣きした、祝うべき1回目の大泣き記念日です。私は『自分の病気が母親の迷惑にものすごくなっていてそれが死ぬほどつらいけどどうしたらいいかわからない』状態だったので、「親離れ」という言葉がクリティカルヒットしてしまったのですね。

それで婦長さん(ベテランの優しい優しい女性でした)が飛んできて、手をさっとにぎってくれて、「とおふさんは悪くない、悪くないからね」と言って、手の甲を落ち着くまでさすってくれて、頓服の薬を飲ませてくれたのを今でもはっきり覚えています。

またそのあと、事務室裏で婦長と今井さんが話をしているのをちらっと聞いたのですが、「私はそんなつもりで言ったんじゃ…」という今井さんの言葉に対して「あなたがどういうつもりかは関係ない、患者さんが泣いているのが事実なの」ってすぱって言っていました。

今思うとほんとのほんとにすごい人だったんだなって改めて思います。

「小さな親切」っていう言葉にもあるように、人ってついつい「良いこと」を言いたくなんですよね。今井さんも、げっそりした母親を連れて入院施設に来た、大人なくせに親離れができていない患者(私)を見て、ふと「言ってあげなきゃ」という使命感がわいたのだと思います。今井さん自身が親離れできていない時期があって、人から同じようなアドバイスをもらったから立ち直れたから、言ってくれたのかもしれません。(今ではもうわかりませんが)

ただ、どれだけ善意であっても、結局それらは「大きなお世話」っていうのが真理なんですよね。受け取る側の意識が一致していないと、どんだけいいことを言われても響かないし、お説教系だと、逆効果なことがほとんど。特に精神発達障害だと、それが顕著です。こだわりの強さに関わる障害でもあるから、周りの人から見たら「何で?」ってことも、本人にとっては正しいことがたくさんあります。

例えばうちの会社で言うと目を絶対に合わせないメンバーが一人います。その人に対して「目を見ながら話しをしよう、合わせるのが礼儀だから」と言いたくなる気持ちが度々わきますが、その都度いかんいかんと自分を押しとどめています。なぜなら合わせないと仕事ができないわけではないからです。理解度が見えないというならば、頷いてもらえばいいし、「OKそう?」と都度聞けばいいだけです。

そのメンバーが目を合わせないで仕事をするのが楽だし、それで業務上問題ない仕組みさえ整えられれば、『目を合わせるのは社会人として当然である』という自分の思いだけが残ります。その思いを相手にも求めることは、結果としてメンバーのスタイルの否定につながり、メンタルダウンを引き起こしてしまいます。そっちのほうがよっぽど仕事ができなくなります。そのため、この場合は、目を合わせよう、ではなく、合わせない状態でも効率的に仕事をしてもらう方法を考えるようにしています。

そういう意味で、婦長さんの「患者さんが泣いているのが事実」という言葉は受け取る側の意識にフォーカスを当てていたのだな、と思います。当時は「私の味方だ」としか思わなかったのですが、振り返ってみると『アドバイスがどれだけいい言葉であったも、受け取り手が抱えきれないと意味がないし、それを言った人がどんな思いであっても、信頼関係がない状態では、すべて「善意の押し付け」になっちゃって、それが相手の価値感や下手をすると生き方の否定になっちゃうよ。だからあなたの思いじゃなく、相手の顔を見て』ということを言いたかったのだろな、と思いました。

私はこの後この婦長さんが大好きになって気持ちが安定したので、結果的に患者に前向きな気持ちを抱かせるのに成功したという意味で、閉鎖病棟の看護師さんの鑑だったのだなと思います。大恩人の一人です。

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