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インバウンド実務録Vol.2:SEOと日照の話

こんにちは、DeepJapanの木立(きだち)です。
日本を元気にするために、インバウンドや観光DXの支援をしています。
自治体の多言語観光サイトを多数制作させてもらっています。

そして期待に胸を膨らませて制作したサイトは日本語の観光サイトのPV数と比較をすると圧倒的な少ないという現実に肩を落とされる方がいます。

あとKPIをどのように設定すればいいですか?と相談を受けることもあります。●年度の1月にローンチして、3月31日の成果報告書上の数字は大してでません。もちろん広告を活用すれば「表面上の数字」は出すことができるので、議会への説明はつくのかもしれません。ただし広告予算が翌年も確保できるかどうかわかりません。広告を確保し損ねると減った後の数字を担保するのが非常に難しいです。

どうしたらいいでしょうか?という声に対して、私なりのアンサーを書いてみます。

私はインバウンド限定の観光ウェブサイトという、ウェブの中でも特定業界かつ、多言語オンリーってニッチなサイト制作をしています。

サイトを制作するうえで分かったポイントをお伝えしたいと思います。

1.3C分析を森林に例えてみる。

3C分析と言うのは、CompanyとCustomerとCompetitorそれぞれの関係を分析をしてドメイン(生存領域)を決める考えた。私は観光マーケティングをするうえで非常に重要な分析なのに、それより先の4PのPromotionに目が行きがちだなと感じております。

さてウェブサイトを制作してどうやったらユーザーが来るか?ということはみんな非常に興味のある点だと思います。しかし世界中でスマホやPCでインターネットを見ている人の時間は有限です。

2021年現在世界には約18億ウェブサイトがあると言われていますが、今あなたがこのnoteを読んでいる瞬間に、地球上で18億人がインターネットに触れていると仮定すると、18億ウェブサイト×1UU=18億人という数式になります。

もちろん全てのウェブサイトに均等に1人ずつアクセスしているとは考えられずパレートの法則のように2割のサイトが8割のトラフィックを集めているので4億くらいの勝ち組サイトが14億人くらいのユーザーを集め、のこり14億のウェブサイトで4億人を奪い合っているというよな図式になっています。実際に2:8になっておらず1:9とか1:99とかもっとダイナミックな比率になっている可能性もあります。

そのことを上手く伝える方法はないかなと考え続けていたのですが、先日、三重県の伊勢神宮に行く機会があり、木漏れ日の道を歩いていた時に合致したイメージが森林と日照の関係です。

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これは外国人が日本旅行に興味を持つ際の関係図です。

日本のインバウンドの森にはJNTOやjapanguideといった年月を重ね、養分(予算)を注ぎ込まれ、葉っぱ(コンテンツ)を方々に広げた巨木が立っています。JNTOのサイトは国費が注がれているし、メディア系のサイトはページを自治体・民間に販売しているので売れた金で肥料を買いさらに養分を注ぐというサイクルで木を成長させています。TripAdivisorなどはトラフィック数が増えれば増えるほど、サイト内で予約が成立してマッチング手数料収益ができるので、広告をガンガンかけたりUI/UXを改造しまくるコストを注ぎ、枝葉を伸ばすカロリーを消費しても、光合成をしてカロリーを回収できてしまう。

そんな中、新しく苗木を植える行為が、多言語サイトを新設するということだなぁと思っております。

実際、グローバルOTAの部長クラスと話をしたことがありますが、日本に興味のあるユーザーの総数なんて「訪日旅行者数×1.1-1.5(見込み客分)くらい」で1人が日本に来る前にサイトを調べる時間なんて平均XX時間だから、XX×5000万時間の取り合いじゃない?

だから広告をかけて、どこかの時間が増えて、どこかの時間が減るだけだよと

そう太陽から照らされる日光の量(ユーザーの総ネット接続時間)はマクロで見ると有限なのだ。

2.情報のサバンナをどう生き抜いていくか

限られた資源を奪い合う姿は、アフリカのサバンナの様です。そこで生き抜いて行くための方法の一つは差別化と役割の明確な設定を推奨しています。

ミニJNTOみたいなサイトを作ってもしょうがないし、国のサイト、県のサイト、市町のサイトで役割は分けた方がいい。自分たちが、自分たちのサイトを持つことはとても素晴らしいがなんにせよ維持費がかかってしまう。

市町のサイトであれば、観光スポットの羅列でなく、独自性のあるコンテンツを作って、うまく県のサイト内に記事とともに連携をしていくパターンなど考える余地はたくさんある。あとあれば旅行会社に売り込みをかける際に安心するというか調べ物はできる。

最近ではその町に住んでいる人やお店のオーナーを取材したり、観光地だけでなく、そこに住む人、そこで働く人をサイトに出す試みをしています。歴史のある酒蔵であれば杜氏さんに取材をして顔が見えるサイトを作るというのも一つそこに行きたくなるヒントの一つです。

いっつも一緒にサイトを作っている「まちづくりプラットフォーム社」と作った気仙沼の多言語サイトですが、気仙沼の人を前に出していこうという方針で制作をしました。

https://visit-kesennuma.com/

なんにせよ3C分析によるドメイン(生存領域)とはよく言ったもので、天敵にやられずに食料を確保できるテリトリーをいかにして確保するのか、とうような生態学みたいな観点でサイトを考えるの重要です。日本人が日本語で日本で生活するための時間というのは

365日×2h(ネット接触と設定)×1億人=730億時間

くらいになるでしょう。2時間より多いかも知んないし1億人よりは少ないかも知んないけど、推定なので細かいところは気にしない。一方、外国人旅行者の場合

外国人の時間:30h(日本を調べる時間と仮定)×5000万人=15億時間

だとすると、だいたい比率でいうと1/50くらいの割合。アジアの人達は金を無駄にしたくないから、じっくり情報を集めるらしいけど割とラフに計画を組む国やタイプの人はどうなんでしょうかね?30時間も見るのかな

この辺りのデータは考察し続けたい領域です。

さらにインバウンドのサイトを難しくしているのは、外国人旅行者のうち中華圏が多いというか、言語の問題。これを考えると15億時間をそれぞれの言語で分割される構図になる。特に中国なんてプラットフォームが強いのに、そこにわざわざサイト作って勝負しに行く価値があるのか?とか、プラットフォームにない情報はなんなのかというのを考えていく必要がある。

ちょうど巨木がまだ育っていない、草原を探すイメージでしょうか。大切な苗木なので、せめて土を耕し、日の当たる場所に植えたいものです。

3.養分を手に入れる生命維持サイクルを組み込む

企業においてはマーケティングコスト売上に対して1-10%とか言われています。これは業界によって平均値は違うそうですがレッドブルなんかは売上の1/3をマーケティングコストに注いでいます。なのであれだけの金をかけてるので各地でXスポーツの大会を開いたりしてチャレンジしている人たちの熱狂を応援している。そんでみんながエキサイティングする場面を見て勇気をもらい、レッドブルを飲むというサイクルができている。

現在のインバウンドのウェブサイト界隈を見てみると、この生命維持のサイクルと組み込むというところが次の課題だと思っています。というのも単年度事業の税金で制作しているケースが多いので、継続的にコンテンツを増やしていきづらい。他にも行政がやる場合は収益化できない(DMOならいいんですけど)といった点がある。理想論では、地域の宿泊者から特定目的で税を徴収したりして、それをマーケティングコストに充てていったり、DMOが旅行会社としての側面も持ち、何かの予約手配を行い、その収益をサイト運用に充てていくケース。

https://www.kankomie.or.jp/index.html

他にも日本一にも輝いたことのある三重県観光連盟の「観光三重」は、DMOなのにメディアとしての側面を持ち、会員から会費をもらう代わりに集めたユーザーに対して観光情報を提供している。

なんにせよ、この世にタダのランチはない。

グロースハックとかA/Bテストとか、高速でPDCAを回すとかカッコいい言葉が並んでいるが、それを実現するためには単価の高いエンジニアを雇用する必要がある。さらにコンテンツを作るためにはライターが必要。そういったコスト面の議論がなきまま成功事例に飛び込むのは私は危ないと思っている人間です。というのもホテルで予約コンバージョンを上げるための改善であれば、OTAに流れていた手数料8%を自社サイトに年間XXXX件切り替えれたら

XXXX×8%=原価削減額  原価削減額-改善コスト=利益

原価削減>改善コスト の式が成立する。

他にもECサイトで「離脱率が30%、年間売上が15億円」という状態で

離脱率が1%改善したら売上がいくら伸びるはず、という仮説が持てる。

あとは伸びる見込みの売上額YYYY円よりも改善コストが低ければ、ガンガンやりましょうという感じです。収益装置を作ったうえで、そこに呼び込むためにコストをかけるか?という観点です。葉緑体のない葉っぱを一生懸命広げても、木にとってはなんも嬉しくない。むしろ生命活動を悪くする行為になりかねない。

蓄えた養分を根を生やす方に使うのか、折れない様に幹をふとくするのか、青々とした葉を巡らすのか?宿り木のように蔓を這わせて別の木を上手いこと使い樹上にまで出て葉を開くのか、ユーカリの木の様に揮発性の油を含んで森林火災を起こして他の木を全滅させてから発芽させて日光を独占するとか、植物に生存戦略を学んでみるのもなかなか趣がある。

まずは、サイトを使ってどうやって儲けるか?またはオーガニックなサイトユーザー数と旅行者の相関がある証明をどう作っていくか?というのは長い道のりになるけど、日本のインバウンドでマーケティングやっている人たちで解決していきたい課題です。

SEOの力をつけて、日本を元気に!
そんじゃーね

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