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円空仏の普遍性について

写真は見沼区島町薬王寺の十二神将像

円空仏は時代を超え我々に訴えかける。

その普遍性と呼べる性格を最も体現している仏像は、子供の遊び道具となり磨滅し原形を留めていない「菩薩形立像」さいたま市砂観音堂である。

円空仏の普遍性は、その形状にあるのではなく構造自体にあるために、見た目が失われている状態によっては強さが損なわれない。いわば、見えない領域での形成物なのである。

円空仏を特徴づける性質は、正面性と全体性、空間の圧縮と解放であり、異なる性質の融合である。

円空仏は独自の正面性を獲得しているが、全体的な空間の拡がりは奥行も含め、周囲へ拡大している。それは、真横から見ると、微妙な前傾が分かるが、その前傾と左右の傾きとが合わさり、正面性を強化する空間に寄与している。その、正面性が空間を圧縮し、蓄えられた空間のエネルギーが飽和するとき、たぐいまれな開放性が生まれる。それは、円空自身の素材と道具、身体の機能とが一体となるとき、制作から芸術性の創造に変わる。道具類の扱い、身体の機能性については、等伯同様、書道の影響も感じられるが、ややうつむき加減の頭部への見る者の視線の動きは、もしかすると円空自身が実際に西洋のマリア像を見た影響なのかもしれない。

いずれにせよ、構造が表現や効果と直結している(芸術として観ればの話だが)ために、独特の軽さと重厚感を併せ持っているように感じさせ、視覚を超えたイメージや強さは破損による見た目の変化には無関係なのである。

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