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「○○みたいなの」という要件

見積が欲しいんですよね?

アジャイルであれ、ウォーターフォールであれ、要件定義は必要だ。何をもって完成とするするか、が決まるから。最初の段階で、完璧ではなくていい。そこから、テクニカルディレクターたる私が、技術的領域に関しては抜けを見つけてあげようではないか。矛盾も指摘してあげよう。

でも次のステップに進むには要件が明確である必要がある。私の仕事だと、それは「見積」のために必要だ。見積もりをするには、どのリソースを、どの程度必要なのかを知る必要がある。そのためには、成果物がなんなのかを知る必要がある。

○○みたいなの

もっとも齟齬が出るのは「○○みたいなのには、いくらかかる?」というやつである。「欲しいものは決まってないけど、いくらかかる?」よりはマシといった程度だ。

「○○みたいなの」は範囲が明確ではない。そりゃ、「スペースシャトルみたいなのが欲しい」と「乳母車みたいなのが欲しい」であれば、まあ、規模感の違いくらいはわかる。でも、あなたが欲しいと思っている見積は出ない。

note みたいなのが欲しい、とは?

うーんと、じゃあ、note.mu みたいなのが欲しいだとしよう。ユーザー管理(登録、認証、削除、メールアドレス変更とか)、各ユーザーごとのノート管理、ノートのシェア、マガジンの管理...では終わらない。

下書き、タグ、タグのサジェスト、画像。ページビューの測定もある。ページビューは、記事ごとに追跡して、ユーザーごとに閲覧権限を割り振る。日、週、月、全体がある。2月は日数が少ないけど、その補正いる? 

スマホアプリあるよ。これもいるの?おっけー、ちなみにスマホアプリからはページビューを見られない。いいの?お、要りますか? 「note みたいなの」のはずだったのに、note には存在しない要件が出てきましたね。

Google+ なくなるそうですけど、ログイン要ります?要りませんよね?あ、念の為いる?いいですけど、リリース日にG+残ってるんすかね? え、それまでにできるかどうか知りたい? いや、まず要件定義ですよ。てゆーか、G+じゃなくてGoogle Accountですね。

シェアした時に、Twitter や Facebook に画像出す必要ありますよね? え、知らない? note にはその機能ありますよ。その画像って、どうします?記事に画像が定義されてなかったら?ほうほうユーザーのプロフィール画像にしたい?おっさんの顔がどアップになって、その下に「Note」とかサービス名が出るのダサくないですか?

運用者用のダッシュボード要りますよね?ユーザーを停止させたり、特定の投稿を止めたりとか。復活させたりとか。そういうの note の中の人に聞かないと分からないですけど、ご存知です?むしろあなたは、どう運用したいですか?

アイキャッチ画像のストックフォトもあるけど、それの管理も要りますね。入稿のシステムはどんなフローをお考えですか?

成果物は曖昧ではいられない

たとえをする時に注意が必要なのは、○○のどの部分を自分が見ているのかを明示的に示さないといけないということだ。

最終的な成果物は曖昧ではいられない。何かができるか、できないか、だ。そのために要件定義が必要だ。

もちろん曖昧な要件から、プロービングしていって、具体的な要件に仕上げて、大雑把な設計をして、見積もりをすることはできる。でも「○○みたいなのが欲しい。ざっくりでいいからすぐに見積を出してくれ」と言われたときに得られる見積は、あなたが想像するよりもざっくりな見積になることを覚悟しておいたほうがいい。100万円〜1億円ですね、くらい。

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