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研修講師をしていると、受講生から教えてもらうことが沢山あります。これは実際に「先生。〇〇の考え方を導入すると良いですよ」と言われるという意味ではなく、演習がうまくいったり、いかなかったり。なぜ、そうなるのかを考えていて、ハタと気づくということです。今日はファシリテーション研修での気づきをお伝えします。

A案とB案のどちらを採用するかの合意形成は、実際のビジネスの場面でも極めて重要ですが、ファシリテーション研修においてもメインイベントといえる瞬間です。

例えば、A案が「英語を公用語とすべき」。B案が「今のままが良い」とします。当然のことですが、両案ともにメリットとデメリットがありますので、それをじっくり洗い出します。ごく一例ですが、以下のようなものが出てくるでしょう。

【A案(英語公用語化)】
メリット:英語しかしゃべらない優秀な海外人材の採用
デメリット:英語が苦手な優秀人材の流出

【B案(今のまま)】
メリット:新たな投資が不要
デメリット:縮み続ける国内市場と共に売上が減少する

この次のステップが合意形成です。深い議論の結果として、自然と全員一致の結論が出ることが理想ですが、そうならない場合は多数決を取ることになります。

合意形成

例えば、
「0:6で今のままが良いことに決定しました」
「4:2の僅差で英語公用語化が決まりました」
などなど。

研修講師として様々な場面を見ていると、多数決での票の配分とは無関係に、合意形成に満足が得られた雰囲気になる場合と、結果は決まったものの、「不完全燃焼感」が否めない場合がありました。この違いは何なのか?

ふと気づいたのが、議論が「暗黙の判断基準」の部分まで触れられたかどうかでした。

例えば、A案のデメリット「英語が苦手な優秀人材の流出」にこだわり続ける田中氏に、その理由を聞いてみたところ、「経済合理性よりも、今まで一緒にがんばってきた仲間が大事」という強い思いが出てくるかもしれません。

あるいはB案のデメリット「縮み続ける国内市場と共に売上が減少する」にこだわり続ける鈴木氏に、その理由を聞いてみたところ、「売上が減少すれば、必然的に人員削減が起きる」という強い思いが出てくるかもしれません。

合意形成2

これらの「仲間重視」「雇用の維持」といった暗黙の判断基準を見える化(明示)することに役立てば、ファシリテーターは大成功したと言えます。これから先は3つのパターンがあり、いずれも満足感の高い合意形成となります。

1つ目は、暗黙の判断基準が明示できたら、通常の多数決に戻るという方法です。

2つ目は、暗黙の判断基準が明示されたら、それを深く味わって、どの判断基準が一番大事かの合意形成をファシリテートする方法です。

3つ目は、「我々はどの判断基準を重視するのか」の多数決をとる方法です。この多数決の結果は、おのずと、A案/B案のどちらを採用するのかへと論理的につながります。

次回に合意形成の場面に出会ったら、「暗黙の判断基準の明示とその合意」を思い出してみてください。

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