田近洵一『現代国語教育史研究』
本書は、田近洵一先生による、戦後を主とする国語教育史研究・教科書研究の論考を集成した一冊である。冨山房インターナショナル刊、2013年。
国語教育史研究は、目標論の研究とのちがいがわからなくなるときがあるくらい、目標の展開と大きなつながりをもつ。それは、教育史がそういう性格をもっているからだろう。その教育史的出来事はどのような時代背景のもとで、どのような社会や時代の要請に応えようとして生まれてきたのかを明らかにする。歴史的必然性を追究する。それは、教育目標を設定する際の手続きと表裏一体なのだ。
目標研究とは何だろう。目標を研究するとは何を研究することなのか。このことを絶えず考えている。この問いに関し、田近先生の著書は私にとって道標のようである。その道標は何のためにあるかというと、国語教育目標の新しい地平を見つけるためにある。その地平に行くという目標を持ちながら田近先生の本を読む。
たとえば田近先生は「はたらき」ということを強調される。「ことばのはたらき」、「言語の機能」。論文の中では言語機能主義とか、機能論とかいわれたりする。この用語にもいろんな意味合いがある。
機能とは何だろうか。ことばの機能の前提には、それをはたらかせようとする人間の意志や判断がある。ことばと人間の関わり合いを自覚するのも国語学力の一つに数えることもできる。また、「読みのはたらき」として挙げられているリスト(p.248)は、よく読むと、「はたらき」という捉え方をしないことも可能な、「読むということ」そのものだったりする。
「はたらき」という用語を使うことで田近先生は何を論じようとしたのかというところに、道標の先があるように思う。
以下、本書において印象に残った部分を摘記しておく。まず教育史研究を行うスタンスに関わることば。
昭和三十年代の国語科学習指導要領を史的に高く評価するところに田近先生の研究の特色の一つがある。
態度主義批判を逆手にとった計測可能性の拡大の論は、主体性の評価という現代的課題にも結び付けることができる。
学習指導要領の「指導事項」をほぼそのまま学習指導案に載せる事例を見ることが多くなっているように感じている。私だけかもしれないが。
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今回は以上です。
この記事は2021年11月5日に別のところに書いたものです。そのつもりはなかったのですが書いているうちに書評のようになってしまいました。いま読み返すと、すでに別の研究者が論じ始めていたり問題提起されていたりしたこともあります。たとえば学習指導要領の指導事項をそのまま引き写す学習指導案が増加してきた背景にはなにがあるのかなど。私も引き続き目標論をしっかりと勉強したいと思います。
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