構造審査よもやま話 第5話 〜安全証明書がそれ一枚で計算書の代わりに、とか活用の実態あるんだろうか〜

餅は餅屋 ※ただし☆3.5以上に限る。





安全証明書とは委託者に対してその建物が構造的に安全でうんとかすんとか。

何十年か前の法律改正で添付が義務付けられましたが、今では何のために付けているのか意義がすっかり見失われた気がします。


この書類で何かトラブルから救われた人いるのかなぁ…



とはいえ法律なのです。

私は構造適判なので安全証明書を見る機会はすっかり少なくなりましたが
逆に、イレギュラーな安全証明書の案件になる事も多く、そうなりますと体感では多くの方が苦労されているなぁ、という感想です。

法律で、ましてイレギュラーなものは仕方がない。


読み解くの困難なんですよ、深堀してみましょう。


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①安全証明書の要否は、計算ルートによって決まるものではない。

良くある誤解で「ルート3やれば安全証明書はいらない」と思い込んでいる方がいます。
概ね正解ですが正確ではありません。

ルート1、2、3等の構造計算は建築基準法の話で、安全証明書の要否は建築士法で決まる話です。

建築士法、がそもそも知名度すくないでしょうか。実務の中では基準法と士法を分けて考える必要性が無いので。

以下、基準法と士法と混同しないようお読みください。


建築士法第二十条

建築士は~建築物の安全性を確かめた場合~その旨の証明書を設計の委託者に交付しなければならない。
ただし、建築士法第二十条の二第一項または第二項~がある場合は、この限りではない。


建築士法第二十条の二

構造設計一級建築士は~建築基準法第二十条第一項第一号又は第二号~の構造設計を行った場合~設計図書に~表示をしなければならない。
構造設計一級建築士以外の一級建築士は~構造設計一級建築士に~適合するかどうかの確認を求めなければならない。


読みやすくできた、、、だろうか。

更に要約しますと
安全証明書は原則的に全ての建築物に必要です。
ただし、基準法20条1号・2号を構造一級が設計したとき又は法適合確認したときは安全証明書の省略ができます。


ここが一つ目のポイントで

お分かり頂けただろうか・・・

基準法20条3号は安全証明書の省略要件に入ってないのです・・・

3号だから要る、ではなく、1号2号を構造一級が関与した時に省略できる、なのです。



二つ目のポイントは言わずもがなかもしれませんが

20条3号はルート1、って話なんですけど、別にルート3やっても構わないんですよね。より上位の計算は設計者判断で可能です。


組み合わせると

20条3号をルート3で計算した場合、それが構造一級でもなんでも安全証明書は省略できない。
ということです。


一般的には、
20条2号はルート2またはルート3、構造一級必要、よって安全証明書を省略
20条3号はルート1、構造一級不要、よって安全証明書が必要

なんですが、
イレギュラーな場合を理解するには原則に立ち戻る必要があるのかな、と思います。



ここでね、基準法20条2号と3号(令36の2、告593)と建築士法3条・建築士法20条の2の話を絡めたかったんですが

近々の法改正予定があるもので、ちょっと今現在で具体的な数値を書きたくなかったのですよ。変わるから。

改正したらもう一回書こうかな。今の段階では片手落ちかも。




②既存不適格のEXP増築は安全証明書が必要。

ここからは更に法解釈が難しくなります。ので、条文は書かないことにします。
きっと書いても読まれないと思うの。


既存建物にEXP.Jで増築を行う場合

一体とした一の建築物には既存の建築物に対する制限の緩和がかかります。

その中で地震に対する構造設計も緩和されており、そのおかげで、既存部分には現行法で地震に対する構造計算をしなくても済むわけですね。

(他方、EXPで別れた建築物は別れた部分ごとに構造規定がかかります。よって増築部分は現行法で構造計算が必要ということです。)


ここで緩和の対象が基準法20条になっています。

なぜ一の建築物に対して緩和させたんだ、と個人的には思うのですが後付けでかつ順番に法律が改正されるため仕方がないことと想像します。


さて安全証明書ですが上の①で書いた通り、省略できるのは基準法20条の1号2号を構造一級が関与した場合のみ、です。

既存不適格はそもそも20条に該当しないので安全証明書を省略することが出来ません。




うーん、ざっくり書きすぎてなんか不安。不正確な部分があるかもしれません。

公式な文章はともかく、例え不正確だとしても先ず発信することが大事、と考えます。
「構造が迷うと意匠が迷う。」とは設計時代の先輩に言われた言葉ですが、染み付いてるなぁ。





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安全証明書は一番上に書いた通り、構造的に添付する意味もあんまりない書類なんですが
付けて、と指摘出たら付けてください。悪いようにはしないから。施主ハンコなんて要らないから。


ちなみに私が安全証明書の要否を見落とすと職務違反だと思いますが、記載内容が間違えてても興味ありません。

存在さえしてれば良し。だって判定員だもの。






あと以前に私に電話かけてきて「なぜ要るんですか」と聞いてきた確認機関の審査担当者、

あなたは理解してください。そっちの領分です。


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