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プレミア第31節 レスターvsブライトン

イングリッシュプレミアリーグ第31節 レスターvsブライトン 2020.6.24

シーズン残り9試合のなか、プレミアリーグは残留争いとCL圏争いが白熱。リバプールの優勝が決まってもなお目が離せないこのイングランドからレスターvsブライトンの試合を取り上げます。

両チーム試合前の状況

レスター(3位)

ロジャース監督のもとチームはここまで59得点を重ね、その得点数はシティ、リバプールに次ぐ三番目の多さ。しかし再開初戦の前節はその攻撃力を発揮しきれず、ワトフォード相手に1-1のドロー。ホームにブライトンを迎え今度こそ勝利できるか。

ブライトン(15位)

前節アーセナル相手に勝利し、降格圏の18位ボーンマスとのポイント差を5に広げることに成功。しかし今後ユナイテッド、シティー、リバプールとの対戦がある。少しでも勝ち点を重ね残留争いを優位に進めたいところ。

スタメン

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ホームのレスターは普段使い慣れたIHの立ち位置をキーとする433のシステムではなく、442のシステムでこの一戦に挑む。対するブライトンは前節からスタメンを4人変えつつも、前節同様の442を基本システムとして採用した。

前半 -序盤の攻防

前半のボール支配率が65:35となったように、多くの時間はレスターがボールを保持し、ブライトンがその奪取を睨む構図で進んだ。その際の両チームの位置取りは以下のようになる。

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レスターは基本の442の立ち位置から左サイドに選手を集め攻撃。2トップの脇からソユンジュが侵入し、チルウェルを高い位置へ押し上げる。そのチルウェルは内側のマディソンと関わりながら深い位置まで侵入し、ファーへのクロス、もしくはチャンネル(CB-SB)に走るイヘアナチョへパスをする形が多かった。攻撃が滞った場合には逆サイドのグレイへ預けドリブルでの前進を試みていた。

その一方でブライトンがレスターの攻撃に完璧に対応する。鍵は前節も好守備を見せたハンター、ビスマだ。ブライトンのFWとSHは相手のビルドアップの際、基本的に身体を外側に向け、ボールをタッチライン側に流すような守備をする。ビスマはそれと同時に、ボールに近い味方二人の間に立ち位置を取る。FWとSH、そしてSHとSBの間の窓を覗くような恰好だ。このようにして外側の選手とともにV字を作り出し奪いどころを限定することによって、ブロックの内側でボールを受けるメンディーやマディソンを狙い撃ちし、レスターの攻撃を阻むことが出来た。

ボールを奪ったブライトンにはそのまま同サイドでカウンターを仕掛けるか、GKまで戻しビルドアップをするかの二つの選択肢があった。前者では前半10分にムーイがDFの裏へ一気にフィードを送ったことによりPKを獲得。シュマイケルがセーブし得点とはならなかったが…加えてこの日プレミア初出場となるランプティーも細かいタッチのドリブルから駆け上がりカウンターを牽引した。

ビルドアップの際は全体が以下のような構図になることが多かった。

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前述のように右サイドでボールを奪われることが多かったレスター。奪われるとバックパスに対し2トップがすぐさまCBとGKにプレスをかける。それと同時にレスターボランチは一番近いパスコースであるスティーブンズとビスマをマーク。一方でDFラインは連動して上がらない。そのためGKがロングキックを蹴り、モペイが競る。そのセカンドをSHやコノリーが拾いシュートにつなげるといったシーンが非常に多かった。

またGKに対し時間が与えられたが、相手の守備がセットされているという状態では、左サイドの198cmバーンの頭めがけて蹴るシーンが多かった。

前半 -中が塞がれているなら...

ビスマがブロックの外側の選手と連動し内側でボールを狩り取る。これが序盤の攻防だった。そのV字の前になかなかシュートを打てないレスターはSHのマディソンとグレイのサイドを逆にする。

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グレイは外側でDFに対して仕掛け、突破することを得意としている選手。彼をベースである左サイドに持ってきたことにより、レスターは狙いどころに設定されている内側のレーンを使うことなく前進するようになる。アジリティーのあるランプティーとの対決はグレイに軍配が上がることが多かった。またそこで1v1をしているそばでチルウェルが関わり、クロスを上げるというシーンも。しかしそれはうまくいかなかった。クロスをファーでフィニッシャーとして合わせるヴァーディーにとって、空中戦の相手であるバーンは相性が悪い。いくら動き出し鋭いヴァーディーといえど20cmの身長差の前にボールを合わせることは難しく、唯一合わせられたボールも力なくライアンのもとへと転がっていった。

このように戦術を変えつつもレスターは決定打を出すことが出来ず、ブライトンの442が上回ったといえる状態で試合は折り返す。

後半 -3度目の正直

二試合連続のドローは避けたいレスター。振るわなかった前半の戦術を再び変更し後半に挑む。それぞれの立ち位置は以下のようになった。

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前半はチルウェルサイドで攻撃を進めていたレスター。後半はグレイを再び右に配置し、チルウェルをアイソレート要因とする。これによりクロスに対しバーンと無理な戦いを強いられたヴァーディーも、後半は15cm身長を下回るランプティーと争うことが可能になった。またブライトンの攻撃のキーであるムーイから離れてボールを保持することで、カウンターの威力を軽減するという狙いもあったように思える。

前線の選手の個性を発揮させるこの戦術変更。これを可能にしたのは中盤での数的優位だ。相手の2トップに対してマディソンが前線から降りて3センターを形成することでビルドアップが容易に。外からしか攻められなかった前半と比べ、中央で中盤の選手がボールを受けれるようになった。ターンや縦パスが得意なマディソンがより生きる。さらにグレイが外でバーンを引き付けられたことによりチャンネルが空くように。マディソンやジャクソンがそのスペースに入ることでペナルティーエリアに侵入する回数も確実に増えていった。

後半 -ブライトンの対応策

中盤での数的不利から相手に中央でプレーすることを許してしまったブライトン。58分に3人の選手交代。個人で仕掛けられるトロサール、ボールを散らせるプロパーらを投入する。そしてその10分後のクーリングブレイクで修正を加える。全体のシステムを442から451へと変更した。

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この変更により中盤の2v3が解消。ムーイ、プロパーのCHをレスターの同ポジションの選手につけることで中盤が同数に。レスターの中央からの前進を再び困難にさせた。さらにサイドにフレッシュな選手を投入したことで深い位置まで相手の対応をすることも可能になった。左であればマーチに大外のレーンを任せることでバーンがペナルティーエリア幅で守るようになり、後半の立ち上がりのようにチャンネルを狙われる機会は減っていった。

後半 -1点の価値

なかなかゴールが生まれない一戦。ブライトンにとってこのままドローで試合をクローズすることが出来れば、残留に向け大きな勝ち点1を獲得できる。対するレスターは4位チェルシーを振り切るために勝ち点3が欲しい。そんあ両チームが最後の戦術変更に出る。

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守り切りたいブライトンは82分にコノリーに変えマレーを投入し、システムを532にする。中盤の3v3をキープしつつ5枚で最終ラインを固める。

対するレスターはボールを中央で保持し、前進させることができるティーレマンスをボランチに投入。2トップの脇で受け相手のCHにマークされても強引にボールを運ぶ。またそこに立ち位置を取り中盤を引き付けることで、少なからずCBの前のスペースが空いてくる。マディソンはそこに入りターンをしたり、アーリークロスのヴァーディーの落としをミドルで合わせることで決定機を演出した。しかし最後までゴールは奪えず、0-0で試合は終了した。

雑感

個人的にブライトンの試合を見たのはアーセナル戦に引き続きこれが2度目でしたが、いずれの試合も相手の戦術変更に対して柔軟に対応し、またその与えられたプランを完遂することが出来ており、非常に良いチームだと思いました。今回の試合はブレンダン・ロジャースも戦術でゲームをコントロールすることに長けている監督であるため、システム変更とそれに対する対抗修正が両チーム連続し、見ごたえのある試合になりました。0-0でも楽しめる試合ってやつですね。

さて明日よりJリーグも再開。今回のレスターvブライトンのような戦術的駆け引き満載の好ゲームが見られることを期待しています。


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