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【ワールドトリガー】非常で冷徹なふわふわわくわく動物野郎 〜ハイレインの魅力と私的考察③

はじめに

この記事は、『ワールドトリガー』に登場する『ハイレイン』が好き過ぎてどうにかなってしまったハイレインer Lv.99(自称)が「ハイレインが好き過ぎてもうだめだ、、、もうこうなったら世間に向かって吐き出すしかない、、喰らえ!!!」とばかりに通り魔の如く吐き出された怪文書的なナニカver3である。

ちなみにこの記事は続き物である。できれば①と②を読んでハイレインer Lv.10くらいになってから読んで欲しい。だが読まなくても多分何とかなるようには執筆しているつもりだ。もうレベル上げは済んだぜ、早く戦わせてくれという百戦錬磨の猛者な貴方はようこそ筆者のバトルフィールドへ。

まあ大体以下のことしか書いてない。

・ワールドトリガーはいいぞ
・アフトクラトルはいいぞ
・ハイレインはいいぞ

①と②を読んでくれた方にはもう大分理解されていることと思うが、当然の如くワールドトリガー本編のネタバレが飛び出すし、多分に想像という名の妄想を含むので注意してほしい。

ハイレインはとても丁寧かつ慎重に作られたキャラクター

ハイレインは、無駄な殺生は行わないキャラクターとしてしばしば作中で描写される。

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トリオンキューブが替え玉かどうかは触れるまで分からないらしい。
引用:『ワールドトリガー』10巻 p.22

まずはこの伝説のシーン。ハイレインが短気な悪役であれば、ここで修の命は間違いなく失われている。「お前の! せいでッ!! 金の雛鳥を逃したッッ!!」と腹いせに踏み潰されてもおかしくない場面である

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ハイレインはこの頃から当主なのだろうか?
引用:『ワールドトリガー』16巻 p.31

次にアフトクラトルのガロプラ侵略、レギーの過去回想シーン。敵意がなければ放置する。これからガロプラを征服して駒として使うのだから、ここで攻撃するのは自分の駒を削る行為だという判断だろうか。この少年(レギー)の復讐心を育ててしまうことも、おそらく理解しているだろうにも関わらず。

非情で冷徹な手段は取るが、割り切っているつもりだが、それでも本人の中である程度葛藤があるのだろう。

それを象徴するシーンを紹介しよう。

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筆者の作中一好きなやりとりです。これも何度も出します。
引用:『ワールドトリガー』10巻 p.44

弟に嫌われたくないのか、気にしているところを弟の嫌味で抉られてついつい口に出てしまったのか、ハイレインも人間なのである。いやあこのシーンはいつ見ても最高ですね。

少なくとも快楽や支配欲のために侵略を繰り返しているわけではない。
権力に狂った為政者ではないのだ。

まあだからと言って全然いい奴ではないのだが。冷静で慎重なのは、むしろ敵の親玉としてはこの上なく厄介な存在である。敵のボスの油断を誘い、その隙をついて格上を凌駕する、少年誌のお約束の手が効きにくいということなのだから。

前回の②の記事にて、ハイレインは諸悪の根源であり、物語の業を集中的に背負う存在の1人だと述べた。

業を背負うには、キャラクターの厚みが必要だ。

ハイレインのキャラクター造形に失敗すれば、ワートリ読者は作中でハイレインに向けたヘイトのやり場を失い、消化不良に陥ってしまう。ヘイトコントロールの失敗である。造形に慎重にならざるを得ない、非常に重要な立ち位置のキャラクターなのだ。

もしハイレインがしょうもないキャラクターだったら、ワールドトリガーは読んでいて全然スッキリしない作品になってしまう

だからハイレインは敵の親玉として立ちはだかるための、『格』を持つキャラクターなのだと筆者は主張したい。

ハイレインの隙がなさすぎるスペック

では改めてそんなハイレインの格が如何程のものか見ていきたい。

ハイレインのスペック、そう聞いて大多数のワ民が思い浮かべるのはハイレインの戦闘面での強さではないだろうか。無理もない。ハイレインの黒トリガー『卵の冠(アレクトール)』のインパクトは強烈すぎる。

皆さん各自お手持ちの資料(BBF)を開き、アフトクラトルメンバーのページを見てみよう。バグが起きているとしか思えない化け物スペックの持ち主が並ぶ。シリアル食品の裏面の栄養グラフか? 何度見直しても「よくこんなん追い返せたな……」としみじみしてしまう。ボーダー頑張った。

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いつ見てもアフトクラトルの面々はとち狂ったステータスである。
引用: 『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』p.241

筆者は『卵の冠』だけでも1つの記事が書けるレベルで好きだが、それはまた別の機会があれば書くとして。

今回筆者が注目したい彼の厄介さ、優秀さはそこではないのだ。

圧倒的指揮能力である。

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シリアル食品の栄養価グラフとの類似性が筆者の中で強く指摘されている
引用: 『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』p.237

作中でも大規模侵攻編にて「トリオン兵を大量展開してボーダー隊員たちを程よく散らしてからの集中戦力投下」、「民間人ではなく訓練兵(いわゆる雛鳥)を目的とした入念な下準備」等、その指揮の高さを遺憾無く発揮している

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だから雛鳥って言うのどうかと思う
引用:『ワールドトリガー』6巻 p.172

しかし、この指揮というパラメータも彼のスペックを伝えるものとしては少し物足りない。ハイレインer Lv.99(自称)としてはちょっと満足できませんね。

指揮という値はBFFのパラメータだが、BFFはあくまで戦闘におけるパラメータしか記述されていない。戦闘における指揮ももちろん大切だが、それだけではないのだ。

筆者がBBFのパラメータに是非追加して欲しいと思う項目に「政治」がある。

BBFに政治というパラメータがあるのなら、ハイレインの政治は間違いなく作中における上限値にあたるだろう。

そうでなければ29歳という若い年齢にして、四大領主として統治し、ガロプラ等の国を支配下にき、遠征で4つの黒トリガーを繰り出すことなどできない。

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実はアフトクラトル、というか近界って結構狭いんじゃないかって思う
引用:『ワールドトリガー』14巻 p.84

彼の本国での本分は統治者であり、政治家である。戦闘員でもなく司令官でもない。戦闘におけるスペックは彼の能力の一部にしかすぎない。四大領主の一角として他家や部下、国の中心部(ゼーレ的なやつ。いるのかどうかも分からないが)を相手取り、日々神経をすり減らしながら謀略渦巻く化け物たちの寝で化かし合い騙し合いをしているのだろう。ハイレインのスペックを語る上で、戦闘能力などオマケに過ぎないのだ。

指揮と政治は、言わずもがな性質が大きく異なる。

ハイレインと同じく指揮10仲間である東さんや忍田さんに焦点を当ててみよう。

東さんも忍田さんも、決して低くはないだろう。だが最高値かと言われると疑問が残る。

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漂うお人好し感がすごい。昔はやんちゃ小僧だったらしいが……。
引用:『ワールドトリガー』5巻 p.166

忍田さんは作中において人情派として描写されるシーンが多い。ボーダー本部本部長である忍田さんがそんなキャラクターでいられるのは、城戸司令の存在が大きいと筆者は考えている。政治的なやりとり、いわゆる汚い大人の部分はボーダーでは城戸司令と唐沢さんが一手に担っていると思われるからだ。

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城戸司令は露骨に政治的な駆け引きを行う描写が散見される。
引用:『ワールドトリガー』5巻 p.176

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この人はさらっとこういうこと言う。ラグビーやってる場合ではない。
引用:『ワールドトリガー』17巻 p.185

だから忍田さん自体の政治力は、高めではあるが最高値まではいかないのではないか、と考える。もちろん政治の値が高い=汚い大人はそのままイコールではないが、目的を達成するために非情になりきれないキャラクターにはなかなか難しいものがあるだろう。

裏を返すと、ボーダーでは忍田さんや城戸司令、唐沢さん等がそれぞれ分担している分野+黒トリガー使い1人分戦闘能力をハイレインは1人で賄っているのである。

東さんにおいては、まだ詳しくは分かっていない。東さん自体の目的が明らかになっていないからである。純粋にボーダーを発展させたい程度で、強い目的はないという可能性も十分にある。作中描写から見ても、ボーダー隊員の成長を注視して、多くの後輩から尊敬され慕われるその姿は政治家には向いていなさそうだな、と思う。これでもし黒幕ポジションだったら伝説になってしまう。そうなったらむしろ見てみたいので歓迎するが。

このように、指揮の値が高くても政治の値が高いとは限らない。

せっかくなので、他にも指揮が高いが政治はそれほど高くはならなさそうなキャラクターを考えてみよう。

二宮さんなどはまさに好例だろう。二宮さんに政治なんかできるわけがない。できたらB級に降格されているはずはない。そしてそれは二宮さんの魅力の一つだと考えているので彼にはどうかそのままでいてほしい。

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修にまで言われてるって! 二宮さん!
引用:『ワールドトリガー』21巻 p.105

ヒュースも決して高くはないだろう。ヒュースは性格上、政治的な行動なんてとれないはずだ。そんなことをした日には彼の心が恥じるものでパンパンになってしまう。とてもじゃないがエリン様に顔向けできない。指揮の6よりはまあ低い値になるのではないだろうか。

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この台詞が一番ヒュースというキャラクターを表していると思う
引用:『ワールドトリガー』17巻 p.107

逆に修はB級ボーダー隊員としてはかなり高い数値になりそうである。相手の性格を読み、話の流れを操作する等、むしろ修は戦闘面よりもそういった盤外戦での活躍が目立つ。そうすべきと思った目的に対するハングリー精神。これを政治と言っていいのかどうかは難しいが、修の盤外戦での力は間違いなくボーダー内でも優れている方である、と言えるだろう。

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これが15歳のやることか?
引用:『ワールドトリガー』17巻 p.149

政治の値トークが楽しくて止まらなくて怖い。

話をハイレインに戻そう。

前回の②の記事にも書いたが、ハイレインは目的のためなら手段を厭わない汚い大人として描写されている。

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ヒミツなこれ。
引用:『ワールドトリガー』14巻 p.92

その場では穏便に済ませておいて、裏で手を回す。表の顔と裏の顔を綺麗に使い分ける部分はまさに策謀家と言えるだろう。感情がないのではない。思うところがないのではない。だが実利のために、相手にそれと判るように感情を露わにしないのだ。

例えば黒トリガー争奪戦の忍田さんのワンシーン。

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当時は城戸さんと忍田さんそんなに仲良くないのかなと思っていたけれど全然違いました。
引用:『ワールドトリガー』4巻 p.119

自分の世話になった大切な人の子を害そうとする態度に凄みを利かせる忍田さん。この威圧は意図的ではあると思うが、半分は本心からの憤りなのではないかと思われる。

これがハイレインの場合だったらと考えてみる。
例えば実弟であるランバネインに対して危害を加えるような発言をハイレインが受けたら、「そうか、それは困るな」とその場ではしれっと流しておいて、後で裏で徹底的に潰すとかそういうことをするんじゃないかと思う。表の顔と裏の顔が全然違う。ハイレインから漂う面従腹背臭。うーん、マンダム。

政治にはどうしても汚い大人成分が必要である。心根が綺麗で純粋な者は上手く立ち回ることは難しい。その成分が例えば東さんに全くないとは言わないが、心の歪み度、濁り度においてハイレインより高いとは思えない。二宮さんやヒュースは自分の心にとても素直な純粋の塊なのでもうだめです。そのままの君たちでいてね。

ハイレインは本来の性質と為せばならないことの板挟みで心に激しい歪みと濁りが生じているキャラクターだと筆者は考えている。後述するが多分ハイレインの本来の性格は純粋で天然な不思議ちゃんだったんじゃなかろうか。環境が彼を汚い大人へと変えてしまった、汚い大人の世界に入らなければ生きていけなかったために歪みが生じて現在の性質になってしまったのではないかと筆者は考えている。最of高なのでこのままどんどん歪んで欲しい

司令官として指揮させてよし、政治やらせてよし、戦ってよし。

大事なのは戦いの勝敗だけではない。いや、そもそも始まった時点で勝敗が決まっているのだ。どう戦争に意味付けし、いつどこで誰を相手に戦争を起こす、あるいは起こさせないか。本来バトル漫画では注目されない盤外の戦いである。ワールドトリガーは盤外戦をはっきりと描く貴重な少年誌のバトル漫画であり、作品の一つの魅力だろう。この盤外の戦いこそがとても大事で、戦争そのものよりも時代を動かすという点において強力な意味を持つ。まさに勝敗は戦う前の意味づけ、目的の設定、手段の策定、準備の段階で既にほぼ決しているのだ。

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ハイレインのスタンスを分かりやすく表している台詞だと思う
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.88

それらを踏まえると、改めてハイレインのスペックは凶悪すぎる。半ば冗談みたいなレベルだ。

裏を返すと、ハイレインレベルのスペックがなければあれ程の業は背負いきれないということだろう。作中におけるヘイトの集中先としては不足してしまう。

ハイレインは本来天然属性な不思議ちゃんだった疑惑

ところで、そんなあほあほつよつよスペックなハイレインなのだが、ちょっとこれをこれを見て欲しい。

ハイレインというキャラクターは、つくづくステレオタイプで当て嵌めようとすると必ずどこかでノイズが生じるキャラクターである。

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「お気に入りはカエルとゾウガメだが、敵に当たった例がない」
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.193

敵に当たった例がないって、
それって敵に当てようと何回か試行している…ってコト!?

それって……

「また外してしまったか……。カエル弾を当てるのは中々難しいな……」としょんぼりしたり、「ゾウガメの圧倒的な体躯! 素晴らしいな」とかわくわくしたりして、『卵の冠』で遊んだことがある…ってコト!?

そんこと書かれちゃったからにはもう…ネ…、想像するしかないよ……ね。

思わず興奮しすぎてニワカちいかわ構文が出てしまったが、まあつまりそういうことなのである。

目的のためなら手段を厭わない冷徹で非常な司令官として描写されているのに、こんなこと書かれるからワートリ単行本の背表紙には本当、困ったものである

あえて書くべきでもなんでもないが、生物弾の種類なんて戦闘において何の意味もない。使いやすく、敵に当たりやすくて強ければそれでいいのである。ましてや、カエルとゾウガメに機能としての様式美的なものは感じ取れない。完全に本人の趣味以外の何者でもない

そんなんだからわくわく動物野郎(英訳 Mr.Discovery channel)とか出水センパイに言われてしまうのである。

このわくわく動物野郎という単語もまた、ハイレインの何とも言えないふわふわ感に貢献している気がする。ひょっとするとハイレインのメルヘンイメージの責任の一部は出水センパイにあるかもしれない。責任とってくれ。

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例の問題発言。このせいで皆ハイレインのことをわくわく動物野郎だと認識している。出水センパイ、ありがとう。
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.46

次はこれも見てほしい。

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嫌いな食べ物の情報までくれたBBF、最高。
引用: 『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』p.300

何とまあ、庶民的なことか。
某社長のように牛フィレ肉フォアグラソースとかではないのである。

この好物は彼の好きなものである『穏やかな暮らし』というプロファイルに非常にマッチしている。衒いや飾りなどいらない、質素でも穏やかで幸せな暮らしが送りたいのではないか、と想像できる。

嫌いな食べ物についてはうまく魚の骨が取れず喉に引っ掛けて「ううっ」と苦しんでいそうなラインナップである。いやまあ、実際にそんな場面があったのかは定かではないが。魚が嫌いなのではなく骨が多い魚が嫌いとわざわざ細かく指定しているあたり、食べにくいから苦手なのかもしれない。

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これは牛フィレ肉フォアグラソースが好きな某社長。ちなみに嫌いなものはおでん。貴様に神を見せてやる……
引用:『遊戯王』10巻 p.200

そして、何と言っても忘れてはならないのがハイレインは『卵の冠』の適合者であることだ。

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「……C級隊員に狙いを絞った作成といい、なんとなく武官ではなく文官の匂いがしますね。「卵の冠」と適合したのもその辺りが関係しているのかも。
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.171

黒トリガーは強力だが使い手を選び、基本的には相性がいい人物しか使えない。『卵の冠』は武官タイプのキャラクターは適合する可能性は低い、ということだろう。

ここで『卵の冠』の性能を振り返ってみよう。

卵の冠は、手にした卵型の装置から様々な生き物の形をした弾を生み出す。触れた物体は、トリオン由来のものであれば何でも反応し、キューブ状に圧縮されてしまう。逆にトリオン由来でないもの、生身などには効果がなく消えてしまう。生物弾自体に殺傷能力はない。

まあ殺傷能力はなくともトリオン体の運動能力のまま生身相手に殴られたら絶対に勝てないのだが……。大規模侵攻の最終局面、もし間に合っていたらハイレインキックが繰り出されていたのかは気になるところではある。

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ハイレインはこの時点では修を明確に殺すつもりだった。迅さんのいう通り、かなり際どい展開だったのだろう。
引用:『ワールドトリガー』10巻 p.16

そして反則なことにキューブを取り込むことによる回復能力も備えている。トリオンは消費したら一度トリオン体を解除して自然回復を待たねばならず、筆者の記憶の限り戦闘中に失ったトリオンを補給できる能力を持つのは『卵の冠』のみである。

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トリオンは回復しない、消耗戦であるという前提をひっくり返すチートっぷりである
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.68

近界はトリオン技術を発展させて栄えてきた文明である。トリオン由来の物質は三門市よりも遥かに多いはずだ。大規模侵攻編での戦いよりも、普段のハイレインの戦いの舞台は『卵の冠』にとって都合が良いだろう。

なぜ生き物の形を象らねばならないのだろうか? 黒トリガーの元になった人物が殺生を好まず、生き物が好きな性格だったのだろうか? 疑惑は尽きることはないが、ともかく、ハイレインは攻守両方を生物弾に頼らねばならない。防御も、生物弾で身を覆うことによって展開される。

必然的に、ハイレインは戦闘中たくさんの鳥さんやお魚さんに囲まれる事になる。作中でも身を守るためにお魚さんシールドを展開していた。そのせいでなんかサカナをよけて本体に当てるゲームが開催されたが。

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お魚さんシールド。敵の総大将が取る防御手段としてはメルヘンが過ぎる
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.55

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なんか変なゲーム勝手に始めないでくださいよ! 当真さん!
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.57

滑稽さと荘厳さとメルヘンのハイブリッドな光景。

雛鳥とか金の雛鳥とか言っている人が鳥を沢山出すのは何とも言えない気持ちになる。本当にどうかと思う。

こうして上げた要素が、どことなくハイレインをふわふわした天然な不思議ちゃん属性があるのではないかという疑いに繋がるのだ。ふわふわわくわく動物おじさんにじゅうきゅうさいなのだ。そしてそのイメージは、冷徹で非常な司令官という本来の立ち位置との強烈なギャップを引き起こしている。とても作中のヘイト要因とは思えない。

ハイレインの好きなもののミスマッチについて

ハイレインが持つキャラクターとしてのギャップ、属性のミスマッチは彼の好きなものの中で既に発生している。いつものアレを見てみよう。

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このシリーズお馴染み我らがハイレインのプロフィール欄です。もうみんな覚えたかな?
引用:『ワールドトリガー』9巻 p.171

まずどうしてもここだけは伝えたいので、どうか今回はこれだけでも聞いて帰って欲しい。

日々穏やかに暮らせている人は、好きなものに穏やかな暮らしを挙げない。

今ハイレインは、穏やかな暮らしとは程遠い日常を送っていることの証である。そもそも侵略国家のボスとして自ら侵略行為を繰り返しているのだから、穏やかも何もあったものではない。

例え侵略行為をせずともそれは変わらないだろう。

ハイレインは29歳にして四大領主の一角である。近界の感覚が異なる可能性もあるが、おそらく領主としては若い方ではないだろうか? 自分より年上たちを相手に、権謀術数飛び交わして凌ぎを削りあう日々を過ごしているのではないだろうか。

求めても手が届かないものだからこそ、好きなものの欄に挙げられるのだ。穏やかな暮らしというのは、ハイレインにとっては遠い昔の幸せだった頃の記憶の中か、童話の中だけに存在する幻の存在なのかもしれない。ハイレインが穏やかな暮らしを求めれば求めるほど穏やかな暮らしから離れていくのだ。たまりませんね!(2回目)

好きなもの「家族」も、色々と想像を掻き立てられる。

家族なんてものは、失って初めて大切さがわかるものだ。

・既に家族を何人も失っている?
29という若い年齢で領主をしているということは、前当主であるはずの両親は? 
・トリガー角の異常で寝たきりの妹とかいない? 大丈夫? 

等、筆者などは色々想像を重ねてしまう。

ワールドトリガーに出てくるのそれぞれの組織のトップの好きなものに共通して「家族」がある。城戸司令、ハイレイン、ガトリン。好きなもの家族仲間。

彼らの目線では、失った過去で傷を負い、これ以上失わせないために組織をまとめる物語なのだ。だからこそ後には引けないし、例え相手にどのような事情があろうとも揺るぐことはないだろう。

城戸さんの若い頃は修をして今とは完全に別人と言わしめる程である。もしかしたらハイレインにも、これまでのぬるい生き方では駄目だ、何も守れないと全ての価値観をひっくり返すような出来事があったのかもしれない。ひょっとするとトリガー角関連だったりして……。と妄想はここまでにしておこう。

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城戸さんのプロフィール。ステータスも知りたい。
引用: 『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』p.27

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ガトリンのプロフィール。企業戦士ガトリンの連載待ってます。
引用:『ワールドトリガー』16巻 p.29

ところで、ハイレインの好きなものは「戦争」と「平和」に大きく大別できる。というかする。

「家族」と「穏やかな暮らし」は当然平和グループだ。
「優秀な駒」「陽動」「分断」、これらが戦争グループである。

「戦争」と「平和」一見して相反する二つのグループが一つのキャラクターに収まっているのは何故か? ここにハイレイン魅力が分かり易く詰まっていると筆者は考える。

端的に言ってしまうと、物事は単純である。

ハイレインの本来の性質に、立場と能力がそぐわっていないからである。

いや、言い方を変えよう。

例え本人が望んでいなくとも、ハイレインの能力が立場に完璧にそぐわってしまっているのである。

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関係ないけどこのハイレインの横顔がとても好きである
引用: 『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』p.235

アフトクラトルという近界最大の軍事国家における四大領主の一角、という立場に対して、ハイレインのスペックはまさに為政者としてあまりにも適切だ。

トップこそ冷静で慎重、清濁併せ呑む策略家でなければならない。汚い大人の手も、真っ向から勝負する手も両方使いこなす人物でなければならない。ハイレインにはそれができる能力がある。あのアフトクラトルの6人のメンバーを見た限りでは、その立場に相応しいのはハイレインをおいて他ならない。

だが、そこでは本人の元々の性格、性質だけが置き去りになっている

カエルとゾウガメを気に入って試しに使おうとするなど、家族と穏やかな暮らしを過ごせればそれだけで良いにも関わらず、賢くて優秀であるばかりに当主にならざるを得ず、当主として非情な決断を繰り返さなくてはならないのである。

優秀であるというのはある意味とても残酷である。ハイレインは当主を降りることができない。

何故なら、自分より優秀でないものに当主の地位に居座られれば、自分が統治するよりも家が危険に晒される可能性が高くなるからだ。

より高い能力を持ったものが統治するのが当然組織として相応しく、家にとって安心安全なのである。家を想えばこそ、家族と穏やかな暮らしを望めばこそハイレインは当主の座から降りることができないのである。

ハイレインは自らの性質によって当主という地位に縛り付けられているのだ。

これがハイレインの背負う業であり、性である。筆者がハイレインを好き過ぎる大きな理由の一つである。やっとこの話が記述できてとても嬉しい。長かった……。

おわりに

どうであろうか?

そろそろ貴方もハイレインer Lv.20くらいにはなったのではないだろうか。

筆者が散々しつこく言及してきたせいでハイレインの好きなものについてはもう覚えてしまったんじゃないかとわくわくしている。

前回、前々回とハイレインの魅力語る語る詐欺を繰り広げてきたが、今回はある程度魅力について言及できた……と思う、多分。

当初予定していた項目が全部消化できていないが……。

消化してない項目は大体こんなところである。もし余裕があれば続くかもしれない。

・なぜ領主なのに遠征部隊にいるのか?
・なぜ領主なのにトリガー角がつけられているのか?
・ハイレインの両親は? ランバネイン以外の兄弟は?
・なぜヒュースを殺さずに玄界に置き去りにしたのか?
・ハイレインの言葉遣いから見るギャップについて
・ハイレインの結婚相手について、なぜいまだに独身?
・ハイレインの性格もっと考察、根本的に人を信じられない、人の不安定さを確かめようとしている

当初思っていたよりも読んでいただけているので、調子に乗りやすい筆者はまた調子に乗って続けてしまうかもしれない。

ともあれ、ここまで読んでくれてありがとうございました。本当に。物好きな貴方に感謝。

見出し画像はmillowさん(https://twitter.com/milowscope)に描いていただきました。感謝。

続き...あるよ


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