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2020/1/30(うたの日366)
三時には夕刊の来る東京の会社勤めは楽しいですか/多香子
(2018/8/26「夕刊」)
自分もまあまあ都会で生活している身であるので、夕刊は四時前には届いている。都会の目まぐるしさを揶揄しているのだろうけれど、歌全体に『木綿のハンカチーフ』のような世界観が流れている気がしていて、都会で働いている恋人に向けての歌だと感じた。故郷の女性から都会で働く男性に向けての。ただ、『木綿のハンカチーフ』で描かれていた、ただ恋人が帰るのをひたむきに待ちつつ、それでいて恋人が都会に染まってしまうのを嘆くヒロインではないようだ。
「楽しいですか」は詠嘆ではなく、皮肉として読んだ。この「楽しいですか」には「そんなに生き急いで楽しいですか?」の意味と「私を置いていった東京であなたは楽しいですか?」の二重の意味を持っているのだと思う。都会での仕事の忙しさを理由に、恋人は連絡してこなくなったのかもしれないけれど、もはや『木綿のハンカチーフ』のように手紙でやり取りする時代ではなく、LINEや携帯電話ですぐに会話することができる。それすらできないというのはおかしいでしょう、というような意味が込められている。忙しいだけじゃない理由も勘ぐっているのだろう。「楽しいですか」にがっと胸倉を掴まれたような心地がする。連絡手段の変容とともに、待つ女の人の気持ちも変わりつつあるのだと思う。強い。
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