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2020/9/9(うたの日366)

がおー、しか言ってないのに頷いてゆっくり冷えピタを貼ってくれた/加賀田優子
(2016/2/17「怪獣」)

じわじわくる…すべてを解って貰えてる感がある。なぜ主体は熱を出した時に「がおー」と云ったのかの心の機微の解らなさが逆に面白い。例えばこれが「がおー」じゃなくて、「大丈夫」とか「平気」とかの「言語」であったら、「言ってないのに」「貼ってくれた」の言い回しの相乗で、惚気としての要素が強くなる、というか、そういうものとして読んでしまうと思う。でも「がおー」なら、言葉を使わなくとも解ってくれるという感じになる。
ここではおそらく、「怪獣」の真似をしているのだろうけれども、もし主体が本当に「怪獣」になってしまったそのときにも、この相手だけは解ってくれるという伏線にも思える。…細かいことだけれども、この歌の中ではその冷えピタを貼ってくれた相手との関係性は明示されていないのもいい。親や兄弟、恋人、読み手のなかで自分の思い当たる人をあてはめて読むことができる歌だと思う。

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