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2020/5/27(うたの日366)

てのひらに五月雨をよりわけてゐるこれは翡翠これは露草/有櫛由之

(2017/5/16「翡翠」)


すごくきれいな歌だと思う。歌意を深く考えるより先に、単語の連なりとそれがもたらす色覚的なイメージがいい。
上の句からは解釈がいくつかできるような気がするのだけれど、主体は「五月雨」が持つ印象を細かく分けていっている…歌のなかで「五月雨」は「青色」のイメージのようで、ただ「青色」とひとくくりにしても、ニュアンスの違う色々な青がある。その、様々な青が生まれる根源として「五月雨」があるような感じで、逆に云えば五月雨が降らなければ青色は存在していないようにも読み取れる。五月雨にはなんとなく悲しい感情を重ねる詠み方が多い気がするので、そこから青色が生まれるような発想は新しく、かつ美しい。梅雨の前の鬱陶しい雨にも、ちゃんと降るべき理由があるということになる。また、露草の季節がそれより少し先なことも、五月雨によって季節が回っていく雰囲気が出ている。もしかするとこの「よりわけてゐる」主体は神さまなのかもしれない。


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