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2020/7/22(うたの日366)

キッチンは武器庫であるにも関わらずだれにも毒を盛らずに母は/青海ふゆ
(2020/4/21「武器」)

キッチンには火と刃物、鈍器、また、大量に摂取するだけで死に到る塩や洗剤も置かれていて確かに危険なものばかり…云い換えれば、武器庫だよな、と。実際、手伝おうとしてくれる他人にキッチンに立たれると、漠然とした不安が湧いてしまったりするのはこの所為もあるような気がする。
母が誰にも毒を盛らないのは「母であるから家族に毒を盛らない」と母も家族もお互いが常識として認識しているからだろう。それが釣り合っているだけで、例えば母がふっ、と気を変えて料理に何か入れてもわたしたちは疑いなく口にしてしまう。日常の当たり前の場面からふっと一瞬さめてしまった主体の揺れを描いていると読んだ。母には家族への敵意や殺意を抱いたことがないのだろうか、という問いもそこにはあるのかもしれない。そして、主体がそう思ってしまったのはなんとなく、主体が家族、もしくは母に対してそれを抱いてしまったことが発端なのかとも思えた。

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