見出し画像

2020/1/23(うたの日366)

シリアルの箱を振っては骨壷もこんな音かと想う朝あり/ふるさとの春
(2018/6/23「箱」)


感覚的に腑に落ちる歌で、けっこうネガティブな歌なのだけれども、惹かれてしまう。自分はシリアルが割と好きなのだけれど、シリアルは冷たい食べもので真冬なんかに食べているとなんとなく憂鬱になるし、それが同じくなんとなく厭世的になる朝とよく合っていると思う。
細かいけれど「朝あり」というのが良くて、「朝だ」とかで単に断定されていたら、いやそれはさすがに…と反論したくなって惹かれなかった気がする。「朝あり」としたことで、この主体も毎日そう思っている訳ではないのだろうことが解る。気分が下がっている朝に気分の上がらない食べもので、一時的にバグってしまった感じというか。
また、このときにイメージしている「骨壷」は、自分に近しい人たちのものではなくて、自分の骨壷のような気がする。自分の骨壷の音は当たり前だけれど、絶対聞くことができない。シリアルを食べ続けている自分は、いずれこういう未来になるだろう、というような。「死にたい」気持ちに近いのだけれども、それを上手く云い表している歌だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?