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2020/5/23(うたの日366)

スポンジに挟まれたほうの苺です僕がもしショートケーキだったら/岡桃代

(2018/3/17「ショート」)

可愛い。でも、悲しくてかつ、大きく頷ける喩えだと思う。この歌のなかの格差は、圧倒的な、月とスッポン的な格差ではなくて、そのなかの微妙な格差を上手く詠んでいると思う。
果物のなかでの苺は高級感もあるし好きなひとも多いし、云ってみれば一軍選手のようなカテゴリーにいるのだろう。けれども、そのなかのすべての苺がまったく同じ規格かというとそんなことはなく、ジャムになって原型のなくなるものもあるし、ショートケーキで丸ごと使われるものもある。…この歌のなかの格差はもっと微妙で同じケーキのなかにはいるけれども、挟まれていてナイフを入れるとようやく解る苺とそうでない苺。ケーキは切ると断層になっていて、ヒエラルキーの表し方として使い方が上手いと思う。同じケーキにいるのに両者を分けるものはなんなのだろう。…主体は、なんとなくそれに気が付いていて、たぶんそれは、自分の努力では補いきれないもののような気もする。例えばちょっとした、運の良さであるとか。ちょっと悲しくて、でも確かにそうだよなあと思う歌だと思う。

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