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2020/8/17(うたの日366)

大陸をいくつも剥いで子午線も取ってあなたにあげるおみかん/小向大也
(2017/11/29「大陸」)

すごく壮大に、蜜柑が剝かれていく様を詠んでいて、なんかいいなあと思う。上二句でまず蜜柑をひとふさずつに分けて、続いて蜜柑の筋を取ってあげている。自分はちなみに、まず子午線をとってから大陸を分けるタイプなので、主体のていねいな様子がうかがえる。また、グード図法で描かれた世界地図って、確かに蜜柑の房を並べたように見える。
そういう表現の面白さもありながら、自分で食べるためだったらそこまで面白さがわかなかったように思う。「あなた」に剝いてあげているのがいい。別に性別を当てはめる要素はないのだけど、自分としては男性が女性に剝いてあげてるイメージで読んでいた。特に深い理由があるわけではなく、その方が「おみかん」がより映えるような気がするし、大きな手で丁寧に筋をとっていることがたぶん絵になる。少し話がそれるけれど内田百閒は「池」のことを随筆では必ず「お池」と書いていた。彼は岡山の作り酒屋の長男で、すごく箱入りに育てられていた。…ただ「~してあげる」だけではなく、そのものへの動作と呼び方で、描かれていない主体の様子がほの見えて、良いなと思う。

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