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2020/8/25(うたの日366)

一生を時計のなかに終りたるちいさき鳩を野に弔えり/小野りす
(2020/4/6「計」)

個人的に、人間じゃないけれど人間に非常に近しいところにいる無機物が好きで、こういう歌にめちゃくちゃ弱い…対人間に注ぐ愛情よりもっと純粋で無償のものを感じてしまう。
この「一生を時計のなかに終りたるちいさき鳩」は時計のなかで終わる一生に対して、つらいとか、くるしい、とかも別に感じていなかっただろう。定められたシステムのなかで、動かなくなるまでその動作を続けた…というだけ、と頭の中では解っているのだけれど、そのシステムに人間は感情移入してしまう。心のないものに、人間は心を見てしまう。そして心のあるものから見ると、心のないものの方が純粋な心を持っているように見えて胸を打たれてしまう。…そして、そんな感情の動きも把握しているにも関わらず、ちいさき鳩を主体も弔ってしまうのだと思う。
「弔えり」の言葉選びが良くて、きっとその鳩に時計の外を見せてやりたかったのと同じくらいに、燃えるごみとして鳩を処分できなかったような気がする。主体がその時計と過ごした長い時間も想像させる。すごくすきな歌です。

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