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2020/7/8(うたの日366)

星まみれ光まみれに飽きたなら真っ逆さまに生まれておいで/水没
(2019/7/2「生」)

上の句と下の句の取り合わせが意外性があり、かつ、うつくしいと思う。…なにか大きな比喩のようにも読めるけれども、自分としてはこれから生まれてくるひとに対して呼びかけているのだと読んだ。それも、誰かの生まれ変わりとして生まれるひとなのかと思った。ただ、それは特定の個人というよりか、これまで死んだことのある誰か、という感じの気がする。生者は皆かつては死者であったというような、輪廻転生の仕組みを読んでいるのだと思った。
「星まみれ光まみれ」は母体のなかの仄暗い感じもあるけれど、やはり空とか宇宙を想起させやすい。また、生まれて来る体勢として、赤子は余程のことがない限り頭から先に出て来る。いってみればこの世に出て来る際は「真っ逆さま」になる。なので、あるがままの体勢ではあるけれど、その言葉選びのためにもっと高いところから産み落とされた感…もっときれいな場所にいたような雰囲気が出ている。そうすることによって、産み落とされた場所が濁世であることも同時に醸し出されている。ただ、「飽きたなら」とあるように、生まれることはネガティブでなく、わたしたちは飽きたらどちらかに移動しているだけということなのだろう。…この歌の主体の母体もきっとそうやって、何度も繰り返しているはずで、呼びかけに深みがある。すごい歌だと思う。

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