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2020/4/17(うたの日366)

わらったら蜘蛛の巣みたいな顔でしょう? 綺麗な蜘蛛のせいだといいな/木村比呂

(2018/12/17「蜘蛛」)


一読してめっちゃ怖い。上の句がまず怖い。「蜘蛛の巣みたいな顔」ってどういう笑顔なのか全然解らないのに「でしょう?」って押しつけてくるのも怖い。しかもそれに呼応するような下の句にびびる。しかも「いいな」っていうのはあきらめのような他人事のような雰囲気もある。自分の笑顔のはずなのに自分の意思で笑っているのではないような。
歌のなかに流れているストーリーを読むというよりは「なんだか解らないけどすごく怖い短歌」として、例えば怪談や都市伝説のような感じで読むのがいいのかな、と思う。なんとなく、自分は口裂け女に近いイメージを描きながら読んだ。口裂け女も自分のことを出会い頭で綺麗かどうか訊いてくるし。…また、これは深読みになるかもだけれど、蜘蛛の巣は割れた液晶画面のようなものをイメージさせやすく、そこに映った顔っぽくもあるな、と思った。昔の写真をずっと見せてきて、今の自分がこうなってしまったのは、誰かの所為だと云ってくるような、粘着質な存在っぽくもある。などと、現実に引き寄せて読んでみたが、「笑顔が蜘蛛の巣」の時点で既に捕まえて離さない感があるのがいちばん怖いな、と思った。

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