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2020/7/29(うたの日366)

フルートの音は人工衛星に届かず 孤独の色は透明/朝田おきる
(2020/1/11「笛」)

不思議な歌だと思う。「フルートの音は人工衛星に届か」ないのはその通りで、主体が地上にまで降りてきた人工衛星と向き合って吹いていなければ、その間にははるかな距離がある。また「届かず」にはその距離以外に、フルートの奏でる音を人工衛星が解するか、の意味もあると思う。こちらがいくら真剣になっても、そもそもコミュニケーションの次元が違いすぎれば、意味を為さない。抒情も共感もその間には生まれないだろう。
「孤独の色は透明」は空気の色と同じということなのかと読んだ。見えない、解らない、しかしそこら中にあるということかな、と。フルートは自分の息を注ぎ込んで奏でる道具でもある。自分の孤独を奏して解って貰いたい感じ…でも、音は空気がないところでは振動によって届くことができない。大気圏外にある人工衛星は無音の状態で、その人工衛星もきっと孤独であるけれど、それをフルートの奏者に解ってもらうことはできない。…
これはフルート奏者と人工衛星の、永遠に解り合えない「孤独」というだけでなく、「孤独」自体が結局眼に見えないので、誰とも解り合えない、ということでもあるのかと思った。それに加えて、空気のあるところにいるものたちはすべからく孤独、ということでもあるのかもしれない。

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