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2020/4/12(うたの日366)

もうなにも欲しくはないの進化図のヒトの先にはしずかな余白/倖

(2019/3/18「進」)


「進化図」とは人類がホモサピエンスに到るまで、ネアンデルタール人やクロマニョン人が右側面を向けてエジプト壁画のように歩いているあの絵のことだろう。だんだんと背筋が伸びていって、最終的にはいちばん最後の図で道具を持って衣服を身に着けている姿になる。…わたしたちが進化の最前線にいるという結論でその図は説明に用いられるはずである。自分たちの後ろにいた猿人たちは、わたしたちのいる場所まで辿り着きたかったのだと、その図の中では提示されているように見える。しかし、考えてみると自分たちは今の最前線から何処へ行きたいのか、何をしたいのかは解らない。自分たちが今後の進化を眼にすることがないのでそこまでイメージできないのだと思っていた。なので「もうなにも欲しくはない」という発想がでてきたことに、驚く。が、そうかもしれないと思わせられる何かがある。今がトップピークで、あとは滅んでいくだけということをなんとなく意識の底で思っているからかもしれない。それは環境汚染や人間の争いの所為にもできるけれど、逆説的にそれらは「なにも欲しくはない」(=すべてを手に入れた)ことから起こっている崩壊なのだとも云える。…人類が滅びていくことを詠んだ歌は多いと思うけれど、こういう滅びすら人類の意志であるような切り口は珍しく、印象に残った。


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