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2020/2/19(うたの日366)

押し倒す両腕の間のやわらかなブラックホール 覚悟はいいか/浦賀エリ

(2014/4/9「黒」)

「やわらかなブラックホール」というフレーズがいいな、と思う一方「押し倒す」「覚悟はいいか」などの強い言葉選びにどきりとさせられる。
一応、自分としては、この「やわらかなブラックホール」は女性の比喩として読んだ。ブラックホールはその女性の性格の比喩ではなくて、女性そのものという感じで、なんとなくこの主体がはじめて女性を抱くときの覚悟のような場面なのかな、と思ったりした。…女性という存在自体を知らない、またここから先に進んでしまえば、もう戻れなくなるような意味を込めての「ブラックホール」なのだろう。なのでこの「覚悟はいいか」というのは、相手に向けてというのもあるのかもしれないが、どちらかといえば自分に向けてのセリフなのだと思う。結句の前の一文字開けもかなり緊張感があって、押し倒して、次のモーションにうつるまでの一瞬という感じで、かなり良い。また、女性を抱くときに高揚感や幸福感も無論あるのだろうけれど「覚悟はいいか」という試されている恐怖がまず出てくるんだな、と興味深い。この読みは性別は逆でも可能なのだろうけど、逆じゃない方が「覚悟はいいか」がしっくりくるような気がしてしまう。いや、でも男同士、女同士ならそれもしっくりくる気がする。勿論、「ブラックホール」をそれこそブラックホール的に、読み手の好きなものに当てはめても読むこともできると思う。

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