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2020/2/27(うたの日366)

ブラックのアイスコーヒー無理矢理に通過させたる喉、変声期/高村七子

(2018/8/22「アイスコーヒー」)

個人的に「変声期」というのがすごく好きで、喉から大人になるってかっこいいなと思って自分の歌に詠み込もうとするのだけどあんまり上手くいかない。たいしてこの歌は全体的に上手いが言葉選び、特にブラックのアイスコーヒーというアイテムの使い方が上手い。
中学生くらいの少年が喫茶店にいるのだろうか。おそらくひとりではないようであり、というのもひとりで入ったなら飲みたくないものを無理に頼む必要はない。誰かに自分がもう大人であることをアピールするために、無理矢理にアイスコーヒーを飲んでいる。…ホットや缶コーヒーではなんとなく駄目な感じがある。勢いよく飲めない、というのもあるけれど、アイスコーヒーが少年と親和性のあった炭酸飲料の代替として機能するからかもしれない。アルコールも大人への通過儀礼的な飲みものではあるけれど、なんというかそちらには、年齢に許されて飲む側面があり、コーヒーは嫌いなひともなかにはいるにも関わらず、飲めることが前提で供されることもある。
また、きっと少年はアイスコーヒーを飲む前から声変わりはしていたのだろうけれど、この冷たくて黒い飲みものを干してしまってとうとう大人になってしまったような描き方がいい。結句のリズムは飲み込んでしまってからの、もう元に戻れない雰囲気を醸し出していると思う。

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