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2020/6/24(うたの日366)

詩人らの数だけ創られる海のどこも鯨が座礁している/酵母

(2020/1/18「鯨」)

好きです。すごく強い短歌だと思う。フレーズで切り取ってもかっこいい。「詩人らの数だけ創られる海」というのは、何故か不思議な説得力がある。これは詩人が海を創るのではなく、詩人の数だけ海を創っている誰かがいるということなのだろう。軽率にそれを「神」として良いのかは解らないのだけれど、まずその存在に詩人として選ばれ、その後に海ができる。この序列に、「詩人」というのは後天的になるものではなく先天的なものだと云うことができる気がする。また「創る」という文字は「創造」の創るである一方で「きず」とも読めて「鯨の座礁」と響き合っている。創造することに対する痛みだとか、死と隣り合うような感覚とも通じているように感じた。
この歌自体が詩として出来ているので、深く歌意を掘り下げると損なわれてしまいそうで怖いのだけど、なんというか、誰も見たことがないがずなのに、きっとそうだろうなと思わせる景を描けていて、巧みだと思う。

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