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2020/5/31(うたの日366)

僕たちは間違っていた氷雨降る断頭台に並べた林檎/己利善慮鬼

(2020/1/22「台」)


一読してめちゃくちゃ怖い。歌意を深く読む前にもう既にやばい感じが伝わってくる。…もっとも、深く読んでこの歌意が十全にとれているかと云われると、かなり難しくて謎な部分が多い。おそらくそれがこの歌の魅力であり、詩になっている部分だとも思いつつ考えていく。
「断頭台に並べた林檎」がまず不穏すぎ、血濡れの頭部をやはり連想してしまう。この「僕たち」が「間違っていた」のは断罪(と敢えて使うけれども)した方なのか、された方なのか、はっきりとは解らない。自分は断罪する方として読んだのだけれども、された方としても読める構造になっていて、これは上手いと感じた。罪を裁く方と裁かれる方、どちらに感情移入してしまうかによって読み方が変わってくるだろうし、罪を裁く方が正義であると簡単に割り切れないことにも繋がってくると思う。…なので、個人のイメージをそれぞれ重ねて読むことになるのだろうけれど、自分としては日本赤軍のことを思い浮かべつつ読んだ。革命を起こそうとして、起こせなかったイメージで「断頭台に並べた林檎」を読んだ。自分たちが屠る予定だった政治家の胴体と首は離れずに「林檎」のままで、結局は仲間内での総括で自滅してゆく様のことと「僕たちは間違っていた」を結びつけて考えた。…本当に、読むひとそれぞれの詩を引き出す歌であり、考えるよりも、生理的にすごいと感じる短歌だった。


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