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2020/8/18(うたの日366)

ほんたうかわからぬ話を聞きながらしづかに夜をすする猫舌/桔梗
(2018/4/19「舌」)

下の句が特にいいな、と思う。「ほんたうかわからぬ話」がどんな話なのか具体的には解らないのだけど、結句の「猫舌」がほのかにそれを立ち上げているような気がする。熱い、少なくとも主体にとっては熱すぎてそれをいっきに飲み込むことができない。…「ほんたうかわからぬ話」なので、実はそんなに真面目に耳を傾けなくて良いはずなのだけれど、主体はそれをちゃんと聞きたいんだろうなあ、と思う。その話をしているひとに好意というか、それでも理解したいという気持ちが「しづかに夜をすす」らせているのかと読んだ。夜中にそんな話をしてくるのってどんなひとなんだろう…自分としては、学生時代の誰かのアパートに何人か、結局帰らないず深夜話し通しのあの感じかなとかも思った。みんな酔ってたりもするし、夢とかやりたいこととか、あきらかに嘘みたいな話とかが混ざってても気が付かない。でも、主体はそのなかでちょっと冷静で、でもその空気が嫌いではなくてその場にいるのかな、と。恋愛として読んだりもできそうな歌だけど、個人的には森見登美彦の作品みたいな、不思議な、でも青春のワンシーンっぽく読んだ。


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