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2020/6/22(うたの日366)

なみだとは血と変わらない成分と知りつつふたり手を振っている/逢

(2015/5/4「血」)

そういえば涙と血ってほとんど同じ成分だった、という発見がまずある。結局自分の身体のなかを流れているものであり、どういうときに何処から出るのかによって感情も分けて考えていたのだと気づく。また、この歌のなかでの「ふたり」が泣いているとは直接描いていないのも上手い。両方泣いているのか、それとも両方泣いていないのか。どちらか片方だけ泣いているようにも読めるが、自分としては両方「泣いていない」ものとして読んだ方が面白いかな、と思った。
「知りつつ」というのがこの歌の眼目だろう。「なみだとは血と変わらない成分」ということは泣くことは身体の一部が傷ついているのと同じ、ということだ。互いにそれを知っている。別れることが互いを傷つけることに繋がっているとも、このふたりは自覚しているのだと思う。ならば、互いに別れたくなくて泣いているシチュエーションも想像できるのだけど、そこまで「知っている」ふたりであるならば、今この瞬間は、笑顔を浮かべて傷ついていることを互いのために隠しているように感じた。


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