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2020/1/19(うたの日366)

軋みつつ明日は来るのだ機械油(グリース)に汚れしゆびが起こすプルタブ/塾カレー

(2019/1/24「油」)

すごくかっこいい歌だと思う。職場詠としても読めるし、もっと別の視点からも読める。
機械技師や自動車整備士の仕事終わりを連想させ、というのも「プルタブ」という語だけで、仕事終わりの缶コーヒーの(ビールかもだけど)一服を想起させており非常に上手い。映画のワンシーンのようなかっこ良さがある。
また、プルタブが開くのは梃子の原理であり、上の句ともゆるやかに繋がっている。さらに、この主体自体が、明日を回しているための歯車でもあるのだろう。もっと俯瞰して読むと、この明日を回しているための歯車は、主体だけでなくわたしたちもそうなのだと思う。グリースに指が汚れていなくとも、一日の仕事を終えたひとはみんな明日をつくるために加担している。
労働を詠むとどうしても暗くなってしまう感じがあるけれど、この歌は淡々としている雰囲気が歌意ともすごくあっていて、燻し銀のようなクールさがある。

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