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2020/3/31(うたの日366)

うそつきと首都高速を抜けていくこのまま暮れたっていい、世界/穏

(2018/12/31「暮」)


めっちゃかっこいい。歌全体に漂っている終末観がすごく好きです。歌意が一読してすっと入ってくる歌ではないし、むしろ謎がかなりあるけれど、それも含めて印象に残り、一行の詩のような余韻がある。
「暮れたっていい、世界」というのは、世界がこのまま終わってもいい、死んだっていい、というようなことだと読んだ。感情的には幸せのピークだと思う。「首都高速」は東京周辺の高速道路を指して、そこからもっと遠くへ行こうとしているのは解るけれど、目的地や、この「うそつき」が主体とどんな関係があるのかは描かれていない。物語が広がっている要因としてこの「うそつき」が使われているためだと思う。うそつきと何処へ行くかも解らないドライブが楽しいとは思えなのに、この下の句だから、普通の意味での「うそつき」として使われていない。主体はその嘘の部分も好きなのだろう。そのため、全体から陶酔感が滲み出ていて、かつ「うそつき」を載せていることで、これから通過した場所から世界を反転させていくような雰囲気がある。
また、この歌に惹きつけられる要因として、幸せのピークを描いてはいるけれど、物語的には何処かプロローグっぽいところがあるからだと思う。つまり、これ以上良くはならない。彼らの「堕ち方」を想像してしまうからかもしれない。ちょっと映画の予告編のような印象もある。この「うそつき」のような使い方を自分も試みてみたい。

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