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2020/2/20(うたの日366)

捕食者とふ権利を我は行使せり鯛焼きなどは頭からゆく/千仗千紘

(2019/4/10「自由詠」)


上の句でハードルを上げて下の句でそれを飛び越えるタイプの歌なのだけれど、これは上の句を文語調で大真面目に云っていたかと思うと、下の句で脱力させられる作りになっている。下の句で真面目さを残し過ぎると面白くないし、逆に力を抜きすぎると絶対すべるのでいいバランスだなあ、と思う。さりげなく鯛焼きをどこから食べるか問題にも触れているので、頭から食べるひとは捕食者で、尻尾から食べるひとはちがうのか…みたいな面白さがある。なんとなく、自分は絶対こんなことを口に出しては云わなさそうな真顔の男性をイメージした。主体がどんなキャラクターなのか、想像する楽しさの余白もあると思う。
また、「鯛焼きなど」の「など」の使い方が上手い。例として挙げる意味の「など」と「ごとき」のような意味のちょっと見下すニュアンスが含まれていて、「我」という人称と響き合っている。全体的に強い言葉が多いのに、かなり細かいところも言葉選びをして上手くまとめている歌だと思う。

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