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2020/5/24(うたの日366)

半壊の駅舎の余震 見納めと思った空を今朝も見ている/苔井 茅

(2018/9/19「納」)

すごくいろいろ考えてしまう歌だと思う。「見納めと思った空」というフレーズがすごくいい。なんというか、「明日」ということは「絶対」来るわけではないのに、心の何処かでその「絶対」を確信してしまっていることに気がつかされる。
眼目は三句目からなのかな、と感じ、上二句までの時間軸は現在なのか、本震が起こってしばらくしてからのことを思い出したのか、どちらとしても読み取れる。敢えてそれを定めていないので特定の地震(自分は阪神大震災の方が実感としては強いのだけど、東日本大震災を思い浮かべるひとが多い気がする)のこととして引き付けて考えるよりも、そのひとそれぞれで思い浮かべる「地震」に当てはめて読みやすいつくりになっている。…また、「余震」という言葉が使われているので、それ以前のいろいろなことも想起させやすい。もっというと、三句目以降のフレーズで地震に限らない様々な事象に当てはめて考えることもできる。明日というもののは永続性のなさを詠っていて、地震はメインではなく背景に置いている。あざとくなってもいないし、素直に頷けるいい短歌だと感じる。



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