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2020/7/25(うたの日366)

人を噛んだことがないならわかんないでしょうあれだけ日が燃えるのも/小泉夜雨
(2020/1/25「噛」)  

一読してなんだか怖いような、不思議な読後感のある歌だと思う。「人を噛んだことがないならわかんないでしょう」と云っているのは誰が誰になのか。そもそも人間に対して云っているのだろうか…自分としては、これは人間が動物に対して云っているのかと読んだ。飼い犬のようなイメージもあったが、なんとなく、飼い犬に対してだと下の句の「あれだけ日が燃えるのも」の効きがいまいち弱い気がする。なので動物園の、本来の野性ならばこんなところにいるはずのなかった動物に対してつぶやいているのかな、と思った。檻のなかで暮らしている生きものは人に対して敵意がない。でもその敵意のなさは、生殺与奪の権利を握られていると知ってのことで、いってみれば仮初めの楽しさや明るさだ。「日」はきっと太陽のひかりの方の日と「日々」の両方をかけているのかと感じた。主体はそんな動物たちを蔑む調子だが、それは自罰的な発言でもあるのだと思う。主体もきっと敵意を抱かず、敵意を抱かれないように過ごしていて、これからも不完全燃焼な毎日がつづくと感じているのではないだろうか。



 





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