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2020/5/28(うたの日366)

目覚むれば曇る硝子に海見えて夢のつづきと思うしばらく/荻野聡

(2017/3/18「覚」)

めっちゃかっこいい。こういう短歌を自在につくれるようになりたい。
上の句の状況はいくつか考えられるのだけど、電車やバスのなかで寝てしまって、目が覚めたら車内の結露した窓の向こうに海が見えていた、という風に読んだ。…誰しもが体験したことでもあるはずなのに、こういう風に歌にするととてもうつくしいし、かつ、描写の省略が上手い。乗り物のなかにいるとも書いていないのにそうだと解るのは、「夢のつづき」と思ったのは曇り硝子のためだけではなく、風景が移動していたからだろう。敢えて書いていないけれども、結露した窓でそのときの季節や車内のぬくもり。そしてそのために眠ってしまったのではないか、などまで考えることができる。
また、自分だと「しばらく夢のつづきと思う」にしてしまうような気がするのだけども、この語順にすると「思う」より「しばらく」が強調されて、現実と解ってはいるけれども、なんとなくぼんやりした、夢に突っ込んだ片足を徐々に引き抜いてゆくような感じが強くなる。派手な単語が使われていないのにとても印象に残る。

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