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2020/2/17(うたの日366)

この星の他には知らずゆるやかに絶滅していくわたしとあなた/かもと

(2019/6/22「他」)

「この星の他には知らず」はその通りのことで、むしろこの星以外のことを知らない者しかいない。すべてと云ってもいい。だが一転して下の句で「わたしとあなた」として、極めてミニマムな世界を詠っている。そのため、いろいろな読み方ができて面白い。完全にSFの視点としてこの星の最初の人類、逆に最後に残った人類、という風にも読むこともできる。
自分としては「わたしとあなた」で世界を完結させて、子孫も増やさない二人を描いているのかなと思った。「ゆるやかに絶滅していく」はなんとなく陶酔感のある表現で、不幸なニュアンスはない。現時点ではその二人の世界に充足している感じがある。勿論、子孫を増やさない選択肢をしたならそこで遺伝子が途絶えてしまうわけで、二人の世界はそれ以上広がることはできない。…歌意的にはそれでも意味が通るけれども、そういう二人がこの星のなかで多くなってきている、ということにも触れているのかもしれない。そういう二人が多くなれば、この星は「ゆるやかに絶滅」に向かうだろう。
また、「わたしとあなた」がヒト同士でない可能性の読み方もできる。例えば、去勢された犬や猫、遺伝子改良された動物、(その動物とヒトの生活)などをイメージして読むのもいいかと思う。もっと云うと、この星ではなかったら、植物のような、別な形での子孫の増やし方もあったのかもしれないな、とも思う。…さらっと読むこともできるけれど、色々な要素に触れていて、すごい歌だと思う。

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