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2020/6/26(うたの日366)

書き込みの多い楽譜を恥じている君はむくげの花に似ている/小宮子々
(2016/7/13「楽譜」)

上の句と下の句の飛び方に不思議な説得力が生まれている。聞いてすぐにピンとくる花ではないことが逆に功を奏している感じがある。また「木槿」とするより「むくげ」としたことも、上の句の「君」をきれいにしすぎない感じでいい。
この飛躍だけで、充分良くあとは深読みなのだけど、むくげがどんな花か知らなかったので調べてみたら、あれがむくげの花だったのか、という感じだった。花びらは白や薄桃色、花びらは薄くて枚数が少ない。控えめだけれど、かといってかすみ草ほど露骨でなく、蓮華や白詰草よりは大きくて目立つ…背景にざっくり花を描いてみたらこうなる、という感じの見た目である気がする。ちなみにむくげは夏の花で、盛りのときは派手な花の中に埋もれていることを想像した。楽譜はソロではなく、きっとオーケストラだろうことも。「君」は周囲に必死に遅れまいとしていて、でも自分にギフト的なものがないことにも気が付いているのかもしれない。それでも、盛夏のなかの花であることに変わらないと、気づいている主体がいることがとても良かった。


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