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2020/4/19(うたの日366)

咲きそうな夜更けがきれい寝過ごして知らない街の二車線道路/小俵 鱚太

(2019/3/26「咲」)


「咲きそうな夜更け」がいいな、と思う。何が咲きそうなのかは記されていない。自分は、なんとなく桜っぽいイメージを描きながら読んだのだけど、ぼかしていることによって読んだひとそれぞれの花が思い描けて、それが「咲きそうな」のがいい。かつ、「咲きそうな夜更け」であったことに知らない場所で、そしてそれがきれいなことに気がつくのは、何かすごいはじまりを予感させる。
また、花の方についてぼかしてあるけれど、道路の方は「二車線道路」と細かく描写されていて、たぶんふつうに作るとここは逆になると思うので、意外性があり、かつ成功していると思う。たぶん、逆にすると、あるあるで終わってしまう気がする。往還しているイメージができて、反対側を走っているひとも「咲きそうな夜更け」を見ているはずで、でもそれがきれいだと思っている人はどれだけいるか解らない。…寝過ごして知らない場所だったことは、多くの人が体験していて、自分の身に引きつけて考えられる。が、そのうえで何処となくファンタジーっぽさを漂わせこの世のことじゃないような雰囲気がある、不思議な魅力の歌だと思う。


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