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2020/5/25(うたの日366)

カマキリの翅をもぎ取る 英雄はいのちの壊しかたから覚える/深彫コトハ

(2018/9/27「英雄」)


「英雄」と「カマキリ」の組み合わせがいいな、と思う。下の句を頷かせるものにするために、善悪のもっと解りやすい図式のなかで生きていた時代…幼い頃を描いているのだけれど、「子供」や「昔」などの語を使わないで表しているのが上手いと感じる。
「カマキリ」を持ってくるところがまた絶妙で、他の昆虫を捕食して食べて、なんとなく悪役っぽい雰囲気がある。人間からカマキリ自身は生きるために食べているだけなので善悪など関係ないわけだけど、幼い図式の世界に生きてきた頃、確かにカマキリは怖かったし、カマキリを捕まえられてた友達は、すごいなあと思ってしまっていた。だからと云って、殺すのは…と思ってしまった自分にはきっと英雄の資格がなかったのだろう。英雄は毎週テレビアニメで登場するたびに何かしら悪役の命を奪っている。「倒す」などの言葉で丸められてしまっていても、実際、英雄の仕事は命を奪うことに他ならない。実は残酷さと紙一重ではあるのだけれど、幼い図式のなかではすのためらいのなさが、すごくかっこ良く見えてしまう…と、ここまで書きつつナポレオンもチンギスハンも英雄でありながら、侵略者であることを思い出した。表だって口に出さなくなっただけで、本当はずっと「いのちの壊しかた」は英雄の必須条件であるのかもしれない。

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