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2020/5/20(うたの日366)

見飽きない世界ですがと会釈して一斉に飛び立ってゆく鳩/しま・しましま

(2017/2/15「見」)


駅前などで鳩が群れている光景はよくあるけれど、そういえば何故か彼らは特に示し合わせた風でもないのに一斉に飛び立つときがあって驚く。そのときの景を詠んでいるのかと読んだのだけれど、上の句が面白い。「見飽きない世界」というフレーズもいいけれど、「ですが」と、結局飛び立って行ってしまうのかと。「会釈」という語の効果もあるけれど、なんとなくカーテンコールのような雰囲気があっていいな、と思う。舞台はひとまずここで終わるけれども、別の場所で続いていくような。…そういう風な視点で見てみると、あの前触れもなく飛び立つ鳩たちは、実はその時々で世界の幕を引いているんだと思えてくる。鳩と人では見ているものが違って、鳩にとってはひとまずそこで、ひとつの世界が終わったから飛び立っていくのだろう。
また、すごく細かいのだけれど、自分だとこの「鳩」は「鳩たち」にしてしまうと思う。勿論、「一斉に」があるので「たち」を付けなくとも伝わるとは解りつつ…それを付けないことによって、鳩がひとつの意思のかたまりのような効果も生まれていて、上手いなと思った。


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