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なつかし劇場 /狼たちの年賀状


197X年元旦。

赤い大型チャリのバッグには、紙ひもで小分けに束ねられ、配達順にナンバリングされた、大量の年賀状。

高校の冬休み、郵便局のバイトをしている、浜ちゃんと小生。

今日はバイトのクライマックス、元旦の年賀状配達です。

郵便局から長い坂を上がり、横断歩道に差し掛かると、、、


「お〜い!おめえら頑張ってるなぁ。まあ、一杯やってけ」


横断歩道のすぐ脇にある居酒屋「麒麟山」(きりんざん)のおいさんです。

アヘン窟のような居酒屋の中を見ると近所のおいさん達が、水で薄められた粗悪な合成酒をあおり、昼間から出来上がっております。

この居酒屋は浜ちゃん担当の配達区域。

浜ちゃんと顔見知りになっていたのでしょう。


「おい!ウチの年賀状どうだ、いっぺえ来てるか?ホレ!お年玉取っとけ」


浜ちゃんに五千円札を差し出してくるおいさん。

信号が変わり、小生は自分の配達区域ヘ。


「浜ちゃん、うまいことやったなぁ」


と思いながら、年賀状を配り終え、くだんの横断歩道に戻ると。

居酒屋の脇にたたずみ、放心状態の浜ちゃん。

聞けばあの直後、

麒麟山のオヤジを筆頭に、居酒屋にいた、小汚いおいさん達が、年賀状を待ちきれず。
ハァ、ハァ、とラフレシアの匂いのような、くさい息を吐きながら、浜ちゃんに殺到。

自転車のバッグをメチャクチャにかきまわし、自分達の年賀状を持ち去ったというのです。

小生がバッグを覗くと、束ねた紙ひもは引きちぎられ、年賀状はバラバラ、五千円のお年玉が高くついた、浜ちゃん。

このあと、郵便局員総出で年賀状を配達したという、北区滝野川の一大事、麒麟山事件の真相でございました。













最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。(*´∀`*)






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