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021 言われた事を言われた通りにやるのは悪なのか?
よく、「言われた事しか出来ない」「言った事しかやらない」という言葉を耳にします。そしてこれらはとてもネガティブな意味を持っていますよね。しかし、場面によっては「言われた事を言われた通りにやること」これが、とても重要な事でもあるのです。
例えばメーカーは安定した製品を大量に生産することが使命。いわゆる量産。そこには生産現場で決まったプロセス通りに加工や組み立てすることがとても重要となるのは誰でも分かると思います。もし、現場の作業者が勝手に創意工夫をして徐々に異なる方法で加工、組み立てしたら?
1.手順や指示を守るのは品質管理の基本
工業製品には何等かのトラブルや故障は付きもの。何か起こった時、必ずその製品番号や製造番号から、どこで何が起こったのかをトレースします。変化点は何処なのか、いつなのか?材料も、Lotも、システムも同じなのに何故か品質が異なる。じゃあ、工程はと言ったときに、その時の工程指示書のバージョンは?設計変更が入っている、入っていない?など、調べていく訳です。
ところが、肝心の生産現場の組み立てで、個人が良かれとやってしまった改善が副作用として全体に影響を及ぼしてしまう事が、実は多々あるのです。これは見つけるのがとても大変。そして、標準書に無いやり方なので何がどう違うのかを定量的に確認するのにとても手間がかかってしまいます。
然るに、「言われた事を言われた通りに行う」は現場ではとても大事な事で、大切な事でもあるのです。工業国と言われてきた日本の製造現場では、このモノづくりの思考から、創意工夫しろ!と言われてもなかなかそうできないジレンマがありました。改善提案、QC サークルという「現場改善」コンテストは長年行われてきたのですが、なかなか本質的なある一線を越えてはならないという暗黙の了解があったのも事実。
2.設計と製造の高い壁
特に、設計 vs 製造には責任分担と言う高い壁があります。何か問題が発生したら、まずは流出防止、そして原因究明と言う流れが一般的ではありますが原因究明の結果、設計不良なのか製造不良なのかによって、社内の取り扱いはこれまた大きく異なります。どちらが責任を負うのか?どっちが損失を埋めるのか?というシビアな問題になってくるからなんです。
設計部門は、性能やコストダウンという目標に向けて常に創意工夫を求められます。一方、製造現場は定められた品質の安定性、生産効率に創意工夫を求められます。そして、決まったら変えない。変える時はいつ、どこから、どのLotからと細かな指定をする。そんな厳しいルールの中で少しづつ改善を進めていく。日本の優秀な工業製品はこんなジレンマの中で成立しており、安定した品質をキープしているとも言えます。逆に言うと、大胆な事はなかなか出来ない環境文化とも言えますよね。
3.新興国ではどうなんだろう?
一方、新興国はなかなかこういった「言われた事を言われた通りにやること」ができなかったりします。品質意識のばらつきがまだまだ大きいのも事実。離職率も高かったりしますので、習熟度が上がらないという課題もあります。なので、人では無くて機械やロボットにやらせてしまおう!という流れが結構強いと言えます。例えば、最近の中国の工場は自動化、ロボット化が凄い勢いで浸透しています。
ロボット化、じつは品質意識が基本的に強い日本よりも、海外での進化が凄いのも事実。その背景には「言われた事を言われた通りにやること」が難しい文化の裏返しなのかもしれません。
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