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【読書感想】『くまとやまねこ』大切な人を失っても、誰もに朝が訪れる。

『くまとやまねこ』は、家族であったことりを亡くして 嘆き悲しみ、疲れ果て、閉じこもってしまったくまが、ある日 旅のやまねこに出会い、また前を向いていくお話。

このお話に、
大切なものを失ってしまった人、そういう人がまわりにいる人に 届けたいと、
私が思うことが書いてあった。
このお話を読んで普通に人が思うことと多分少しズレているだろうと思うので、書いておきたくなった。

くまの悲しみを理解し、くまを新しい世界へと連れ出す やまねこの存在はもちろんとても大事。そのようにこのお話を読む人も多いと思う。
だけど、私は、

暗い暗い水底のような場所からくまを救い出したのは

あの朝
窓を開けたくま自身の手
外に出て歩きはじめたくま自身の足なんだ と思う。

自分で窓を開け、自分で歩き出す先で、きっと人は「やまねこ」に出会う。

それが私が届けたいと思うことだ。

今は 悲しみの中で疲れ果て、誰かの声を聞くことにも痛みを感じ、安らかな眠りさえも訪れることのない、うすぼんやりと果てなく続く 光ない場所にいるとしても

誰もに あの朝が訪れるようにと 願わずにはいられない。


くまをなぐさめる言葉の一つも言ってあげられなかった森のなかまたちも、何もできなくてうつむく夜の果てに訪れるあの朝を、
窓をあけて光を見上げるくまの姿を、
きっと、ずっとずっと待っていたと、確信している。


『くまとやまねこ』文・湯本香樹木実 絵・酒井駒子

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