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“超高額”の葬式は、コロナキッカケで価格破壊するか。 [連載]アフターコロナを考える(1)

「アフターコロナを考える」ための“10の事例”を連載する。第1回は、異色なところで「葬式事情」をとりあげる。(2020.08.13時点の記事)

1、“高額”すぎる日本の冠婚葬祭事情

私自身は東京のビジネス街でアラフォーで働き盛りを過ごしてる環境だから余計かもしれないが、そもそも宗教的な儀式に関与した経験が浅い。神社や寺院があったらお参りくらいするけれど、基本的には日々を無宗教的に暮らしてるし、信心深くないぶん神様仏様からの恩恵も特に当てにはしていない人生を送っている。健康管理・安全第一は自己責任だ。

だから私は「葬式」に参列して、お経を聞いても意味わからんし、お焼香の順番が回ってきてもやり方わからないし(何の目的かも見当がつかないし)、あるいは「結婚式」に出てどうして数万円も包まないといけないのかもよくわかってない。
お金の話しでいえば「準備する側」だってそうだ。調べたら、葬式代金の日本の平均額は195万円だそうで、結婚式は316万円だという。あまりに高すぎる(下記のサイトが参照元)。どう考えてもまだまだ価格破壊できる要素は多分にある感じがする。

一生にそう何回も「開催側の立場」に立つ機会があるわけではないイベントだから、経験値が蓄積されにくく、反省が次に生かされない。
それに、希少なイベントだからこそ「まあ多少お金がかかってしまっても仕方ないよな」と我慢しがちになる点も、冠婚葬祭の心理的特徴といえそうだ。


2、“コロナ”という千載一遇のチャンス

ただ、この業界の改善が難しい最大の要素は、人が亡くなった慎ましい場で“お金の話し”をするなんてのは「はしたない」「失礼にあたる」と日本人的に感じてしまう点だと思う。
値切りも、相見積もりもまともにせずに、“言い値”で取引してしまっている印象がある。いかなる市場も競争原理が働くよう設計されるべきであるのに、それでは良くない。

この“慣例”を切り崩せるとしたら、今回のコロナが千載一遇のチャンスと思う。

「三密」を理由に、開催者側は「人を集めたくないので」という理由が言えるし、参加者側も「行きたいけど集まるのもご迷惑を」と言い訳が語れるようになった。
この大義名分があるのはとても大きい。
「ケチくさい人」だとか「故人に失礼だ」とか陰口言われないようにと、なるべく過去踏襲で“慣例的”な、大袈裟な葬式を開きがちだった日本人が、変われるキッカケにできるかもしれない。念仏の意味もお焼香の意味も理解できてないのに大金を支払うのはやはり馬鹿げている。

そんな中、三密回避の施策として、新しい葬儀の形「リモート葬式」が登場してきたのである。
「コロナ環境下での葬儀」についてレポートした雑誌の記事を2つピックアップして、現状を見てみよう。

週刊女性(2020年7月28日号) コロナ禍で葬儀が激変! 「オンライン葬儀」「ドライブスルー弔問」の意外なメリット

そんな中、注目を集めているのが、インターネットでライブ配信される葬儀にネット上から“参列”する「オンライン葬儀」だ。
「住職がお寺などで読経する様子をネットで配信。喪主さまやご遺族、親戚や友人などの参列者は、別の場所からパソコンの画面越しに手を合わせ、焼香します」(中略)
「ショッピングサイトでお買い物をするのと変わらない感覚で、お花やお供え物はもちろん、お香典もネット決済で送ることができます」
料金は、葬儀料に平均3万~5万円をプラスした程度。パソコン越しの葬儀に当初は違和感を訴えるものの、いざ利用してみると、“これで十分”“なかなかいい”という感想を持つ人が多いとか。

AERAdot.(2020.4.28)「オンライン葬儀」が想像以上にすごい!

実は、この葬儀には「続き」があった。通常の葬儀と同じく、「精進落とし(会食)」もオンラインで行われたのだ。精進落としは、WEB会議システム「Zoom」が使われた。主催者があらかじめ「取引先」や「職場の元同僚」など、コミュニティー別にセッティング。そのやりとりがYouTube上で限定配信される仕組みだ。(中略)
人が集まらなくて済むオンライン葬儀は、時代のニーズにも合致しているという。「2040年には、団塊世代700万人が大量死する時代がやってきます。葬儀会場の確保が困難になる上、参列の回数も増えるでしょう。オンラインであれば、場所の制約もなく、1日に複数回の参列も可能になる。また、超高齢社会を迎えるにあたり、高齢で思うように動けない人や、入院中の人でも参列ができるシステムは理にかなっています。コロナを契機に、これまで踏み切れなかった葬儀の変化がいや応なしに進んでいる。世界全体で人の弔い方が変わるはずです

「リモート葬儀」が手探りながら開始されているし、時代に即した便利さも証明されつつある。良い流れだ。


3、“安くて簡易型の葬儀”の選択肢をうまく使おう

でも結局、豪華な葬儀を準備して、それをリモートで繋いだだけだと、費用は高止まりしたままだ。
そこで、“葬式の形態”自体が変わってきている。
「リモートで繋ぐくらいなら、簡易型にして、簡素に見送る形でも良いのではないか?」そういう考えも主流になってきているのである。

もともと葬儀の形態には、旧来型の「一般葬」の他、家族だけで簡易的に送る「家族葬」、もっと簡略化した「直葬」といった方式があるが、この“簡易型葬儀”の割合が増加しているという。
その傾向は、実は“コロナ以前”からすでに都市部中心に現れていたのだが、それがこのコロナ環境下でいっそう増加傾向にあるのだそうだ。
2015年と2017年の形態別比率のチャートを引用する。

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「葬儀へのコロナ影響」をまとめた記事からも一部抜粋しよう。

葬儀の種類は、葬儀場などで行う一般葬が約半分、約4割が家族など少人数で行う家族葬、残りが通夜を行わない一日葬と直葬だったが、今、業者への相談・依頼で一番多いのが直葬で、次が一日葬である。会葬者への感染リスクを考えれば当然の措置だろう。
――葬祭業界はどんな影響を受けていますか。
「葬儀、法要でも『3密』をつくらない意識が高まり、小規模化や日程調整の相談が増えている。葬儀は件数こそ減らないが、法要は件数が減少している」
「葬儀会社は中小が多く、打撃を受けている。特に本格的な葬式に主眼を置く葬儀社のダメージが大きい。式を短縮したり、参列者の人数を減らしたりする葬儀が増えている。業界相場は読経や食事も含めると190万円程度とされるが、火葬だけで済ませるケースも出てきた」
(日経 2020年4月30日)

「人が密にならなくて済む」ということもあり直葬式・火葬式が増えてきている。
この方式だとどれくらいの予算感で実施できるのかというと、ググると、10万円台〜30万円台ほどでほどでやれてしまえるようだ。いくつかの業者のリンク先から予算説明ページの画像引用しておく。

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このように、手頃な葬儀も増えてきている。
しかしもちろん一長一短はあるので、安いぶん、不足している事もあるだろう。後悔しないように、利用者それぞれに合った葬式形態を良く調べて使う事が重要だが、それでも“選択肢が増えている”という事は、消費者として喜ばしいことだ賢く使いたい。

(おわり)

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