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腑に落ちる服

いま、やっている仕事のひとつに30年目を迎えたブランドのリブランディングがある。
30年もやってると個性があるけど惰性もあって、どんなことも『見直す』ってパワーいるよなーと思いながら、毎日企画を練っている。

週末にクローゼットの整理をした。
去年までの数年間はアパレル関係の仕事もしていたので、その現場に合った服装をする、と決めて、これまであまり買ったことのなかったブランドの服を揃えてた。靴だけは足の都合でブランドを固定しているので、合わせるのはちと大変だったけど、着心地もよかったし、気に入ってた。
あの現場にいる時は毎日、この服に手が伸びてたなーと思いながら、ヘビロテしてたワンピースを片付けた。バイバイ、またね、ワンピース。
クローゼットに空きを作りたくて整理したから、しばらく着ないな、と思った服を別の場所に移動しただけなんだけど、ヘビロテしてみんなに似合ってるって言われても、そこそこ高かったなと思っても、結局このブランドは私のスタンダードにはならなかったんだなと思ったら、なんか自然にバイバイ、が出た。ひとつの時代が終わった感じ。そんな大げさなもんでもないけど、でもそういう気分で片付けた。

商品のブランディングをするとき、必ずついてくるのは『デザインを変える』だ。見た目って大きいから、けっこうなボリュームを占めるわけで、それはリブランディングでも同じ。

人で言えば、それまでトレードマークだった服装や色をガラッと変えて、新しい自分を演出するみたいなもん。長めのスカートからデニムパンツに、タイトなシルエットから丸みのあるふんわりした印象に、みたいにスタイリングを変える。
どこを残して、どこを変えるか。どんな方向に?誰を意識して?
これってデザインの中に当たり前に含まれる要素だけど、新しくつくり出すブランドと違うのは、今回みたいなリブランディングの場合は、それまでそのブランドがつくってきた個性に『合った』デザインじゃないと肚の底には落ちてこないってこと。そのブランド(=これまでのユーザー)の中に溶け込むようなデザインじゃないと借り物競争で終わっちゃって、アラー馬子にも衣装、よかったね、な商品に落ち着く。そして当然のことですが、売れなくなる。

で、私のクローゼット整理。
似合ってるし、気に入ってるけど、でもその現場を離れたら着なくなったあのブランドたち。よかったんだけど、今一歩のところで私の本質には及ばなかったんだな、と思った。
スタイリングしてもらって、素材もよくて、あれもこれもいい思い出だけど、私のスタンダードにはならなかった。仕事用だから、と思ってたこともあるけれど、全然オフィスっぽいデザインじゃないのに(むしろ会社には着ていかない服なのに)そういえば遊びに行くとき着たことなかったかも。
あれはあくまであの現場の私にしっくりきてた服だった。

そういうデザインもある。短い期間で売り切るブランド、入れ替わることを前提にした商品は世の中にたくさんある。
でもいま、私が携わっているのは次の30年も愛されたいブランドで。デザインどーでしょーて思ってたけど、どんなスタイリングになるかって考えてみると(私もやってる作業ではあるんだけど)なんか違う意味で楽しみが増えるね。
いままたちょっと壁にぶつかってるのに、みんな忙しくてブレストする時間がとれなくて、年度末ってもう!!って思ってるわけですが、そんな時だからこそ、ついついダーっと溢れがちなクローゼット整理って役に立つなーと改めて思った話。
※ちなみにブランド好きでもないし、服も持ってませんのですがね、クローゼットもまた、なぜかダーっとなるのだよね


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