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知ってると知らないの節穴

たとえばある業界の企画会議で『Aの原料ってBじゃなくてCなんだって』ということを、ある人が最近初めて知ったんです、と披露したとしましょう。
ある人をヤマちゃん、披露された人の一人をナンバさんとする。

ナンバさんはヤマちゃんに「そんなの、私がこの業界に入った20年前には言われてたわよ、イマドキ知らない人っているの!?」と言い、Aの原料はCなんてことは当然でしょ(今さら何言ってるの)、という態度でその話題を片付けた。
それで、ヤマちゃんがちょっと凹んだりして、この話はおしまい。

でもこれって、企画会議の時にはけっこう重要な発言だと思うのですよね。
なんせ20年前に当たり前だったと主張する人と、最近になって初めて知って驚いた、という人が混在してる、というシーンなので。
20年前から当たり前だったことも、同じ業界の同じ会社の中でさえこうなのだから、知らない人がたくさんいるかもってことだからさ。何かを企画するときに、こういう知らない人に向けて発信する必要はないか、を見直すいいチャンスなわけです。
開発なんかだと優先順位の一番は、過去からの延長線のつづきで新しいものとか、機能性の高いものをつくり出す、ということかもしれないけれど、営業やデザインなんかだとそれよりも今、これを届けたい人が何をみていてどう感じているか、の方が優先順位は高いんですよね。
ずっと同じ業界にいるとつい、忘れちゃいそうなことだけど、新しいことがいいわけじゃなくて、いま、必要なもの欲しいものにフィットするかどうかが大切なので。

だから新しいお客様に自分たちの商品を手に取ってもらいたいなら、20年前には当たり前だったけど、いまはちょっと忘れられちゃってて、でも知らない人が知ったら『へぇ~、そうなんだぁ~』ということは、あえて声を大にして言った方がよかったりする。
ねえねえ、これって知ってる?って。

それで、知らない、って言われた時のことと、知ってる、って言われた時のこと、両方を用意しておくのがいい。
それが、私はあなたとコミュニケーションをとりたいんです、という証になるから。

スキルを身に着けるということもそうだけど、学ぶって積み重ねだと思ってる方も多いけど、刷新とか手放すってことも同じくらい重要。
知らない人の『知らない』の中身を知ることは知ってる人の『知ってる』を知るのと同じくらい面白くて、新しい世界が開けることは多い。
知ってる(と思ってる)知識に飛びつかないっていうのは、それだけですごいスキル。

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