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事業再生をスタートさせるタイミングの判断~銀行員の発言に注目して~

事業再生は多くの場合、手遅れに近いダメージを受けこのままではいけないと覚悟してスタートします。なぜ痛い目を見ないと事業再生が必要なタイミングだと気がつけないのでしょうか。

多くの会社は

営業赤字

銀行融資を借り入れる事による問題の先送り

二期連続赤字

銀行に融資を申し込むも謝絶される

なんとかすれば、まだ借入ができるはずだ

という思考から抜け出せません。

赤字という会社が上手くいっていない現実をきっかけに会社の改善に取り組めばよいのですが、会社の業歴、資産、担保などを理由に融資が借りられる可能性あります。

借入により資金繰りの危機は回避されますが、会社の体質が改善されたわけではなく、原因が巡り合わせ的な営業不振などの一過性の要因だとごまかしますが、多くは構造的な問題として赤字が再現されます。

そして、連続赤字やそれによる債務超過転落を理由にいつか借りられなくなります。

今回は、銀行員(メガ・地銀・信金・信組でも同じです)の発言から事業再生の端緒を見つけようというテーマです。

鳥倉は「事業再生はいつから開始するのがよいですか?」と聞かれた際に「新たな融資が借りられなくなったら、事業再生のスタートの合図です。」とお話しします。しかしながら、多くの会社は融資が借りられなくなっても、自社に事業再生が必要と思えずにいます。その誤解はどうして生まれるのか、融資を謝絶したときの銀行員の発言に着目して考えてみましょう。

  1. 「もう少し返済が進むと折り返し融資の検討ができるかもしれません」
    融資は与信極度がいつも維持できるわけではありません。PLとBS両方見ながら総合的に検討されます。この発言は与信極度にのみ着目し、返済すれば埋め戻しの融資が得られると誤解させて、返済を進めさせます。

  2. 「他行にも相談してみてもらえますか?協調できれば検討できるかもしれません」
    自分の銀行だけが悪者になるのを避けて、協調支援融資なら検討できるかもしれないと論点を変えます。本当にそうかもしれませんが、銀行の審査基準はそれほど大差ありません。金額の多い少ないで融資の可否は決まりません。返済能力の有無で融資が決まります。そのため、他行と融資金額を分け合って1行あたりの金額が少なくなったからと言って貸せるとは限らないのです。

  3. 「保証協会に聞いてみますね」
    プロパー融資は当然に貸せないのだけど、それを言うと角が立つので保証協会の判断次第とお茶を濁します。多くの中小企業にとってプロパー融資がいただける可能性は低く、保証協会や公的金融機関、担保次第の調達状況になりがちです。保証協会に本当に確認してくれて、迅速に回答があればよいのですが、数ヶ月して連絡がないなと焦り問い合わせると「保証協会もダメだったんです」と言われる事も多いです。

  4. 「もう少しで決算期なので決算が確定してから検討しませんか?」
    試算表はあくまで試算表に過ぎず、与信判断に使えるものは決算書という事実はあります。年間の切れ目では、納税の必要もあり、期ずれなどの粉飾をしにくいです。また、決算期から6ヶ月程度、期が進捗してしまうと前期の決算が参考にならなくなるというのはその通りです。決算期を越えて、決算が確定するまで2ヶ月を要します。例えば10ヶ月目にこの発言をすれば、本格的な融資検討は4ヶ月後になります。しかも新たな決算書ができあがったとしても、その決算書であれば借りられるという保証はありません。

  5. 「社長の会社にはまだお金があるじゃないですか」
    銀行員には、債権者としての顔があります。1円でも返済してほしいのです。しかし、企業経営という視点で語れば、現金が1円あるか否かではなく、勝負所は所要運転資金があるかないかです。商売をワンサイクル回せる資金が無ければ、少しばかりお金があっても意味がありません。組織が大きくなれば億円単位でお金があったとしても所要運転資金を割っていることも当然あります。感覚的なお金のあるなしで、融資の必要性を判断したり、返済可能性を議論するのは稚拙なのです。曖昧にすることで、融資を断らず、リスケをさせず、返済をさせる魔法のトークです。

  6. 「事業計画書を作ってもらえますか?計画を見て融資ができるか検討します」
    金融機関は結果主義で、決算書に基づいて融資判断の可否をします。どれほど優れた計画を作成したとしても融資が得られる可能性は多くはないのです。経営革新計画のような保証協会枠が広がる可能性のある計画書を作成し、自行で融資せずとも保証協会付融資を検討しようという意図がある場合もありますが、多くの場合決算書ではなく、計画書を理由に融資が借りられることはありません。計画の承認により枠が拡大したとしても、当然ながら融資の実行には売上規模や既往の借入など与信状況が影響します。

  7. 「質問項目に全てお答え頂ければ、融資を検討します」
    何か金融機関は貴社の財務上の問題に既に気がついており融資ができない状況にあります。粉飾決算、在庫の過剰、売掛金の未回収、法人と社長個人の資金管理が一体化してしまっているなど、構造的な問題を解決できなければ融資できないと判断しています。その為、不明朗な点を回答くださいと言っていますが、答えたとしても改善ができなければ融資ができない場合が大半です。

  8. 「何か新しい担保や保全のようなものがあれば融資が検討できるかもしれません」
    現在の金融機関はバブル期の反省を元に、担保評価に依存した融資ではなく、収益力による債務償還年数に着目しています。その為、赤字であるが担保や保全を理由に融資ができることは少なくなっています。無いわけではありませんが、金融機関は財務のプロです、会社の資産や社長の個人資産は調べ上げています。本当に融資の可能性があるのであれば、このような曖昧な聞き方ではなく、社長の個人資産の○○の不動産を担保提供いただければ○○○○万円貸せると思いますがいかがですかと言った踏み込んだ発言をするはずです。

債権者と債務者は利益が相反します。債権者である銀行員は自行のため、預金者のため、株主のため債権回収を進めようとします。債務者である会社は、一時的苦境を乗り越えるためリスケジュールしてでも生き残ろうとします。悪い金融機関、悪い金融マンがいるのではなく、構造的な問題、役割の違いとして認識して下さい。立場により、問題の最適解は変わるのです。

銀行員は融資を謝絶すると、リスケジュールを申し込まれるかもしれないと身構えます。そのため融資謝絶の後に、返す刀でリスケをされないように上記の様に振る舞います。そのため社長は、今がダメでもこの先には、融資が得られるかも知れないと誤解して、事業再生のタイミングを逸します。

会社の改善のために事業構造を変革するには痛みが伴います。現実を受け止めず、赤字は構造的な問題ではなく、一過性の問題であると考え、今の苦境を融資によってお金を足してやり過ごせばなんとかなると考えてしまいます。

結果として、深手を負って痛みに耐えかねて事業再生をようやくスタートさせるのです。ぜひ銀行員の発言を端緒として、事業再生をタイムリーにスタートしましょう。

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