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勝負の土俵を他人に委ねるな

大学卒業して新卒で入った今の会社。
私はとにもかくにも仕事が出来ないいわゆる「ポンコツ」でした。

新人なら誰もが通る道かとは思いますが、やることなすこと裏目に出まくり。空回りの連続。ミスの連続。
「なんであいつあんなに仕事できないの」と陰口叩かれているのを
うっかり聞いたこともあります。ドラマみたいですね!(実話)

仕事内容も体力的にハードな面が多く、
特に新人の女の子は退職したり休職する人も珍しくない職場でした。
(ブラック企業とかではないです)

当時の私にとって特に鬼門だったのが
社内でも「怖い」と有名な女性上司の存在でした。
ポンコツゆえに怒られることも多く、バリバリのゆとり世代で俗に言う”叱られ慣れてなかった”私にはまさに冷や水をぶっかけられるような毎日でした。

「新人の頃は見ていられないくらいひどかった」
「お前は絶対辞めると思っていた」
職場の人と思い出話に花が咲くとき、今でも必ずと言っていいほど言われる言葉です。

そんな悲惨な新人時代、どうして辞めずに今まで続けることができたのか?
辞めそうになることも病みそうになることも何度もありましたが
それでも踏み止まれたのは「ポンコツのポンコツによるポンコツのための考え方」があったからだと思います。
今日はその話を書き留めておこうと思います。

針より鋭い女性上司の話

前項にも少し書きましたが私の上には社内でも「怖い」と有名な女性上司がいて、普段からしょっちゅう注意を受けていました。
これがまぁ「態度が怖い」「言い方がキツイ」「機嫌に左右される」
恐怖の3Kをばっちり兼ね備えた人で当時は胃がキリキリするような日の連続でした。

・私の「仕事で至らない点」をビッシリ書かれたメモを皆に見えるようなロッカーに貼るだけ貼って挨拶もせずに帰る。
・私がミスを犯してしまい、その上司に謝罪の電話をかけたところ「ご迷惑をおかけしてすみm…」ぐらいで受話器をガチャ切りされる。
・「ここが分からないのですが…」と質問すると「はいはい私がやればいいんでしょ」と逆ギレされる。

などそれはそれはもう厳しいご指導(笑)を受けるときもありました。
相手が傷付くかどうかなんてお構いなし。
「キレ散らかす」とはまさにこのこと、といった感じでした。

ただ、日々怒られながらひとつ疑問に思っていたことがありました。
「なぜあの人はあんなに偉そうで強気な態度を取るのだろうか?」ということ。
上司だから?私が仕事が出来ないから?様々な理由が思い浮かびます。

いつも上司は私に「あれが出来てない」「これが出来てない」と注意します。反対に上司自身は確かに私が出来ていないような「あれ」や「これ」が出来ます。
仕事をする上で上司には出来て、私には出来ないことがたくさんあります。
仕事が出来ない人より出来る人の方がどうしても上下で見たとき「上」になってしまうから強気な態度を取るのだろうという結論に至りました。

でも、それは「この会社」の「この仕事」だけの話です。

勝負の土俵を相手に合わせるな

突然ですがたとえ話をします。
もし今勤めてるこの会社が急に方針が変わって「足が速ければ速いほど偉い会社」になったとしたら?

私は元陸上部なので足には少し自信があります。
今の仕事で上司に勝てることはないかもしれませんが、
もし上司と100m競争をしたら勝てる自信があります。
というかおそらく勝ちます。

普段からこっぴどく陰湿に怒られたあとは決まって上司の背を見送りながら
「よかったな!!この世界が”足が速い方が偉い世界”じゃなくて!!
もしそうだったら間違いなく私が上司でアンタが部下だったからな!!!!!」

と心の中でいつも叫んでいました。

確かに「今の仕事」において上司よりも私は何もかも出来ないポンコツかもしれないけれど、今の仕事以外の「勝負の土俵」さえも相手に軍配を上げる必要なんてありません。
たまたま広い地球の広い日本の数ある会社の中の1つの会社にある1つの仕事ができたかできなかっただけの話です。ただそれだけの話です。

それができなくても私は上司より足が速いし、絵も描けるし、大食いだから少食な上司よりも大好きなフライドチキンをきっとたくさん食べられます。
私にだってできることはいっぱいあります。
そう思うだけで随分心が軽くなります。

だからどんなに怒られても、
「なんて私はダメなんだろう。なんで上司みたいに"デキる"人間じゃないんだろう。私は何も出来ない人間だ」なんて一度たりとも思ったことがないですし、思う必要もないことです。
心の中の勝負の土俵くらい自分に白星あげましょうや。

目の前の常識をひっくり返してこそ見えてくるもの

もしこの世界が「足が速ければ速いほど有能」な世界だとして。
もし上司が私より足が遅かったとして。
それでも私は「なぜあなたは足が遅いか」なんてことをビッシリ書いたメモを上司のロッカーに貼り付けて挨拶なしで帰ったりはしません。
そんなことしたって相手は傷付くだけだし、それで相手の足が速くなる訳がないことなんて分かりきってるからです。

そうやって逆転の発想をすると、いくら自分より仕事が出来る上司といえど
いかに相手に思いやりのない行動をしている人なのかも一目瞭然で分かります。
勝負の土俵を自分の有利なものにスライドさせたら見える世界は180度変わります。そうすれば理不尽な注意の全てを受け入れる必要がないことも見えてきます。

自分の仕事の出来なさを棚にあげてなんとも生意気なことを考えていた新人時代ですが、この「全ての勝負の土俵を相手に渡さない」考え方で私は何度も救われました。
「仕事ができない自分」=「何もできない自分」に結び付けてしまうことで更に仕事へ向き合う気持ちが削がれることは分かっていました。
「仕事はできないけれど足は速い自分」でいる方がよっぽど明日もまた会社に行く一歩が踏み出せたのです。

あの頃から9年経ち自分が「上司」と呼ばれる存在になった今、
あのときの「生意気な考え方」はあながち悪いことではなかったなと思っています。

仕事の最大のミスは「自分を責めて落ち込むこと」

ポンコツも9年経てばそれなりに成長して
今では15人以上の部下を抱えて、ひとつの部門をまとめる責任者をやっています。
仕事が出来ているかいないかでいえば、昔よりは出来るようになったけれど
出来ないこともまだまだたくさんあるし、部下の人にもいつも助けられています。

あの頃の女性上司のように、今度は自分が部下を注意指導するようになって思うことがあります。
それは仕事の最大のミスは「自分を責めて落ち込むこと」だということ。

自責の時間は何も生みません。
自責の思考は膨らんで膨らんで他のことを考える余地を奪います。
「次はどうすれば同じミスをしないか」といった自分自身でフィードバックする時間や思考すら奪います。
二度と同じミスをして欲しくない上司にとって、
二度と同じミスをしたくない部下にとって、
「自分を責めて落ち込む行為」って単純にめちゃくちゃ効率が悪いです。

新人時代、厳しいご指導(笑)のお陰でどうやったら部下が傷付いて自分を責めたくなるかみっちり教えてもらいました。
そして「出来ない自分を責めるより、上司より自分にだって出来ることはたくさんある」ということを傷付いた部下はしっかり気付くことができました。

ポンコツだったからポンコツの気持ちは痛いほどよく分かるし
上司になった今、逆にポンコツにキレ散らかしたくなる気持ちも痛いほどよく分かるようになってきました(笑)

上司がやるべきことは、なるべく部下の心に傷を付けずに注意・指摘をすることだし
部下がやるべきことは、出来ない自分を責めるのではなくそこをぐっと堪えて、気持ちと目線を次に向けることだということをこの9年間で学びました。

だからこそ仕事が出来なくてそんな自分を責めて苦しい思いをしている人は
目の前の世界を自分の有利な世界に逆転させて
「仕事は出来ないけどこれだったら私は誰にも負けないけどね!?」
「私の得意分野が重宝される世界だったらお前ら全員下っ端だからな!?」
と、心の中で悪態ついて明日も会社に行きさえすればいいと思うんです。
そうやって毎日毎日過ごしていれば、気付いたらあの頃より随分山の上の方まで登ってきているはずです。

なにも出来ないポンコツが、出来ない自分を反省もせず
心の中で悪態ついて毎日ただただ会社行ってたってなんとかなるもんです。
なんとかなるもんですよ(笑)

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