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結末がわからないから面白いんじゃないのか、もしかして。

ごきげんよう、鳥居です。

若手演出家コンクール2023最終審査
劇団コメディアス
『キャッチミー開封ユーキャンRTA』
を見てきました。

とてもおもしろかったので、noteに書き記そうと思った次第です。

コメディアスには昨年2023年11月に『KEY LOCK』という作品にて出演させていただきました。

『KEY LOCK』フライヤー


コメディアスは今でこそメンバーのほとんどが東京におり、東京での活動をメインにしていますが、
わたしが彼らを知った2016年くらいは東北大演劇部を母体とした団体で、仙台で活動していたんですね。
当時から新進気鋭で、へんなことをしていて、参加している人たちが楽しそうで、とても素敵な劇団だったんです。

当然鳥居は当時から「出たい!」と熱烈に希望していて、それが長い時を経て、昨年東京にてついに出演が叶ったわけです。

じつはその『KEY LOCK』こそが、若手演出家コンクール2023の二次審査対象作品でして、客演ですのでなにをしたわけではないのですが、これを経てこの最終審査に進んだとあらば、思い入れもひとしおなわけです。

がんばれコメディアス !


今回の『キャッチミー開封ユーキャン』は審査・再演用にリブートされた「RTA」版になっています。

「RTA」とは、「リアルタイムアタック」の略。
ゲーム実況などで用いられる言葉なのですが、要は「とにかくどんな手を使ってでも、最速最短でゴールに辿り着けばよし!」というゲームプレイスタイルのこと。

『キャッチミー〜』は借金を背負った登場人物たちが、一つの箱に詰められ、賞金を手にするために箱からの脱出を試みるというストーリー。
……なのですが、コメディアスにおける「ストーリー」って「この状況にある人々があたふたする姿をみたい!」というのを達成するためのとりあえずおあつらえ向きの状況でしかないので、そんなに深く考えなくてもよさそう。

結論から言うと、わたしが見た2/27 19:00回は脱出失敗回でした。


でも、大満足回でした。


なんならもう一回見たいと本気で思えるくらい、手に汗握り、あーあー言ったり拍手したり、客席が一体となって一つの箱のある一点を見つめ続ける、スポーツバーみたいな観劇体験をしました。
仮にもう一度観に行っても、絶対同じことは起こらないんだよな、このお芝居。

あとで演出の鈴木あいれくんや出演者とお話しする機会があったのですが、
「稽古ではちゃんと潰せるバグを潰して、成功率を上げて挑んだ」(この辺がSE畑の人たちの作劇スタイルで好き)
「本番で初見のレアバグが生じて判断ミスが重なった」
というようなことを言ってたので、「失敗してもいいやー」でやってるわけではけしてなく、カーテンコールで箱から出てきた彼らはとんでもなく汗ビッチョリ、疲れ切った顔をしていて大変良かったです。

コメディアスにもちゃんと、脚本があり、なぞるべき流れはある。
けど、その道を辿る過程で俳優それぞれが本気でその場その場に起こることに反応し、挑み、解決する。

これってすっげー演劇的だな!って思いました。

若手演出家コンクールはその名の通り、「演出」の力を見てるはずのコンクールだと思うんだけど、コメディアスがどのように評価されるのかとても楽しみです。
一回「失敗」してるから、次は絶対成功してほしいな……

でも観客としては「失敗」だとしても変わらない楽しさがあったと思いますよ。
この作品の本質は「RTA成功」「RTA失敗」でななく、「RTAに挑むことそのもの」だと思うので。

そもそもお芝居って、結末を知らずにワクワクして見ることもあれば、有名な戯曲で結末を知ってるからこそそこにどう至るかに注目して見ることもあり……。
今回のお芝居の場合は「脱出」というゴールを全員に共有しながらも「ほんとうにそれが達成されるかはわからない」という本気のハラハラを与えてくれたので、とてもいい体験ができました。
ご都合主義が一切なく、磁石がくっつくか、ギリギリの手渡しができるか、物がちゃんと切れるか、落ちるか……
本当の物理現象と、本当の人間の汗やリアクションが見られるちょうたのしいアトラクションでした!


みなさま、どうぞコメディアスを応援してあげてくださいなー!
コメディアスだけでなくとも、若手演出家コンクールは毎年とってもすてきな演出家のみなさんが集い、挑む演劇の賞レースです。
ぜひ盛り上げてください!

じゃあ、またね!

今日は発泡酒じゃなくてビールにしようって思えます。