ペルソナ5のこと

2022年のPS+にペルソナ5スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(以降P5Sと表記)が来るという噂が立っており、実際、北米版では配信が決定したそうです。おそらく日本でも同じ内容になるではないかという今日この頃、PSストアのセールにペルソナ5 ザ ロイヤル(以降P5Rと表記)が来ており、今まさに始めるのにうってつけではとこれを書いてる次第です。
多くのRPG好きゲーマーはとっくにプレイ済みである可能性も高いですが、気にはなっているのだが…で足踏みしている方も少なからずいることでしょう。そんな方にこの年末年始、プレイしてみてはいかが?というススメ。

・そもそもペルソナ5とは
ペルソナ5(以降P5表記)。アトラスから出ているペルソナシリーズの第5作目のタイトル。2016年9月15日に発売され、2019年10月31日に追加要素の入った完全版P5Rが発売された。
P5に含まれている要素は完全版であるP5Rにすべて含まれているためこれからお買い求めるなら迷わずP5Rを買っていただければいい。そのおかげでP5はすごい値崩れを起こしているのでついそちらに手を出したくなるかもしれないが、なにか理由がない限りはP5Rを買えばいい。
なお、ナンバリングタイトルであるものの、続編ではないので5から始めてもらっても全く問題はない。世界は共通しているが、過去作の人物が物語の本筋に絡んでくることはなく、ファン向けにおまけ的な形でそっと出てくるにとどまっている(背景のポスターや、DLCのエクストラバトルなど)。

・システムのこと
基本的なシステムはオーソドックスなコマンド選択式のRPG。ダンジョン内ではシンボルエンカウント制。
本作は日付の概念があり、高校生である主人公達は平日の日中は学校に通い、授業を受ける。放課後や休日はプレイヤーが行動を自由に選択できる。街へ繰り出し買い物をしたり、友達と遊んだり。勉強してもいいし、アルバイトに精を出すもいいだろう。勿論、ダンジョンに潜って戦うのもいい。主人公には人間パラメータという数値があり、行った行動によってこの数値が上昇する。勉強することで知識が上がったり、ホラー映画を見て度胸を鍛えたりといった感じだ。しかし時間は有限なので、一日にできることには限りがある。特定の日までに特定のミッションを完遂しなければGAMEOVERとなってしまうので、時間のやりくりは計画的に行う必要がある。
戦闘において特徴的なポイントは弱点属性の攻撃をあてるか、クリティカルを出すことで相手を“ダウン”状態に出来ること。相手をダウンさせたキャラクターは再度行動できる“1more”が発生。1more中の味方はもちろん再度攻撃することもできるし、他のキャラクターに行動権を移譲する“バトンタッチ”を発動することが出来る。
バトンタッチを活用することで敵が複数種いても、弱点を突けるキャラクターへ行動を受け渡していくことが出来、ピンチの時には回復スキルを持つキャラを敵の行動前に割り込ませることもできる。誰をどの順番で行動させるか、これがP5の戦略性を膨らませる大きな要素になっている。

・音楽のこと
P5に限らず、ペルソナシリーズを語る上で必ず出てくるのは音楽の話。具体的なことを話し始めるとキリがないので可能な限り簡潔に、なおかつ5のみに限定しておく。
今作の「怪盗もの」というテーマに合うように、アシッドジャズがサウンドのイメージになっており、全体的に落ち着いた雰囲気の楽曲が多い印象。通常戦闘曲がボーカル入りの楽曲となっており、どうしてもマンネリになりがちな雑魚戦に花を添えてくれる。ボス戦や特別な戦闘の際には落ち着いたアシッドジャズではなくゴリゴリのロックサウンドが採用されるなど、差別化も図られている。P5Rではチャンスエンカウント(所謂味方側から敵側へ行うバックアタック)時には新規楽曲も用意されている。
ボーカル曲は基本的に全編英語ですが、歌詞の内容がゲームプレイ序盤と、終盤では違った解釈になるのも本作のお約束ともいえるので、ぜひ色々な和訳を探したり、自分自身でも行ったりしてみてほしい。
ちなみに一部楽曲はコラボ先のゲームで聞けることも多い、特にプレイヤーが多いであろうスマッシュブラザーズSPECIALでは本作の主人公がDLCで参戦しており、購入することで楽曲も追加される。本作をプレイしていないが、これによってキャラと曲だけは知っているという方もいらっしゃるだろう。

・世界観のこと
ネタバレというほど深く掘り下げるつもりはないが、まったくまっさらの状態で本作に触れたい方はここで読むのをやめてPSストアにアクセスしてほしい。P5は基本的にオープニングやトレーラーで、人によってはネタバレと感じるほど情報を出している。具体的にはどのようなキャラが仲間になるのか、どのようなキャラが敵として立ち塞がるのかなど。これに関しては個人的な意見であるが誰が仲間になるか、よりも、なぜ、どのようにして仲間になるのかが重要であるからではないかと思っている。なので、本当にまっさらでプレイしたい人は精々OPを見るだけにとどめておくことをお勧めする。
では改めて世界観の話を。
テーマはピカレスク・ロマンと言われているが細かく言うなら和製ピカレスクとか学園ジュブナイル+ピカレスクとかそんな塩梅。ピカレスクは含みのある生い立ちや、社会の鼻つまみ者、生きるために犯罪に走るものなど、悪者が主人公となり、日常を生きるための闘いに身を投じていると言ったもの。既プレイヤーの諸氏はこれを聞いて確かに…。となっている方も多いと思う。和製ピカレスクだと評されるのはおそらく主人公達が悪行と呼ばれる行いをするのは、それ以上の巨悪に立ち向かうため。正義をなすための行いであるというのが、和製ピカレスクに多く見られる特徴であるからだろう。
そういった背景に本作のタイトルである“ペルソナ”が寄り添う形になる。ペルソナとは人の心の奥底にある「もう一人の自分」、別人格が具現化した存在。誰しも人や社会と関わって生きていくために外面を持っていると思う。ペルソナはそういった外面に抑圧された人格であり、主人公達はそれと向き合うことでその力を開放し、戦いに身を投じていく。
P5は学園物であるが、彼らの行動範囲は学校のみにとどまらず、東京都内の様々な場所を訪れることが出来る。地名や店名も実在する場所をモデルに作られているため、表記の一部や店名などは変更されているが、忠実に再現されており、そういった楽しみ方もできる。街並みの再現やロケ地の聖地巡礼がお好きな方はテンションが上がることだろう。

・ストーリーについて
前述した通り、主人公達は世間から嫌われるはみ出し者達である。
主人公は前歴持ちで周囲の人間からは差別的な目で見られたり、怖がられたり、はれ物に触るように扱われる。保護者代わりの居候先には邪険に扱われ、教師達には面倒を起こすなとくぎを刺され、クラスメイト達にはひそひそと噂され、後ろ指を指される始末。ペルソナシリーズはどこか仄暗く、胸糞の悪いストーリーが展開されることがよくあり、このあたりが最も人を選ぶポイントかもしれない。
特に本作は主人公達が腐った大人たちの犠牲となり、その人生に取り返しようのない大きな苦しみを背負わされてしまった者達なので、徹頭徹尾痛快な冒険活劇が繰り広げられるわけではない。
しかし、そうやって奪われ、虐げられたままの人生を変えるべく立ち上がり、反逆の狼煙を上げた少年少女達が、腐った大人達の歪んだ欲望を頂戴する心の怪盗団として活躍する。というのが本作のメインストーリー。

・登場人物について
前歴持ちで元の学校にいられなくなり、転入を余儀なくされた主人公。臨時コーチを殴って退部になった元陸上部の問題児。教師との関係を噂される派手な女子。勿論彼らはその字面通りの人物というわけではなく、そこにはやむにやまれぬ事情の末にそうなっているのだが、当然ながらそこまで深く彼らに踏み込んでいく人はいない。しかし、それはある意味当然で、彼らにとって出会ったばかりの主人公=貴方は前歴持ちの元犯罪者でしかなく、彼らは関わり合いになりたくない問題児なのだ。そんな人達と深い仲になろうとする人などそうはいない。よって、概ね本作に登場する人物達は非常に第一印象が悪い。彼、彼女は貴方に対し強く当たったり、冷たくしたり、まともに交流も図ろうとしないこともある。下手に関わり合いになれば、自分も同じような存在とみなされ、冷遇されかねない。教師達もまた、生徒達に主人公達とは関わらないようにしつこく釘をさす。社会で集団生活を送る上で、規範や道徳に背く行いをするものは集団の中では裏切り者とされ、排除される。これは生き物の持つ本能的なもので群れの害になるような存在は群れそのものの崩壊を招きかねないため、排除しなければならないというもの。これによって集団は結束し、秩序が保たれる。こういった制裁をサンクションというが、主人公達は不当な扱いによってそれを押し付けられてしまっている。しかし、登場人物達の多くは始めこそ貴方に対しきつく当たるが、貴方の本質に触れるにつれ、その態度を軟化させていく。ペルソナはもう一人の自分。主人公達だけでなく、登場人物達はみな社会を生きていくために持つ外面と、もう一人の自分を持っている。貴方が真摯に向き合えば、彼らもそれに応えてくれる。初めて会ったとき、あんなに嫌いだった彼、彼女が、プレイ後には愛しくてたまらない存在になっているのは本作ではよくあることである。

・P5Sについて
冒頭であれだけ述べていてなんだが、来月フリープレイに来るP5SはP5の続編なのだが、アクションRPGであり、普段コマンド選択式RPGしかプレイしていないゲーマー諸氏にはちょっと辛いジャンルかもしれない。
なおかつ理由がない限りはP5Rを買えと抜かしておきながら、P5SはP5Rで追加されたEDの続編ではなく、P5のEDからの続きとなっているので、P5さえプレイしておけば問題はない。なんならP5Rで追加されたEDとはつじつまが合わなくなる。(ちなみにP5Rは特定の条件を満たすと追加EDへ向かい、条件を満たさないとP5のEDを迎えるので、P5RならどっちのEDもみれるようになっている)
よって、追加キャラや追加EDに興味がないならP5→P5Sでも特に問題はないのだが、P5はかなりのボリュームであり、しっかりハマってP5Rもプレイしたい!となったとき、データを引き継いで追加要素だけ楽しみたいというプレイングが出来ず、大ボリュームの共通部分を最初からやり直すことになる。しかもDLC等でP5からP5Rにアップデートするといったことも出来ないので、このセールを逃すとフルプライスのゲームをもう一本買い、さらにまた100時間近くプレイすることになる。なので、やはりP5Rをセール中に買っておくことをお勧めしたい。

・最後に
今更ながらP5についてだらだらと話したのは、やはりこれまでなんだかんだ手を出していなかったP5に手を出すなら今だ。と伝えたかったの一言に尽きる。本編を半額に近い値段で買え、続編を無料プレイできるなんて…。
JRPGの名だたる金字塔の多くが剣や魔法が当たり前に存在するハイファンタジー作品である中で、ここまで日本的アニメ漫画要素を日常世界に練りこんだローファンタジー作品が面白くないわけなよね?と言わずにはいられないのである。

居場所のない貴方が居場所を見つけ、いつしか皆の居場所になっていく物語

是非多くの人に体験してみてもらいたい。


P5Rデジタルデラックス版は、本編で使えるDLCだけでなく、PS Store専用テーマとRで追加された楽曲が収録されたサウンドトラックもついてきます。楽曲が好きな方はこちらをお勧めします。

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